日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-67
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優秀研究発表 ポスター
メチルニトロソ尿素28日間反復経口投与によるラット海馬ニューロン新生顆粒細胞系譜の神経幹細胞からの広範な傷害性について
*渡邉 洋祐水上 さやか長谷川 也須子赤堀 有美今田中 伸哉吉田 敏則渋谷 淳
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抄録
【背景】アルキル化剤であるメチルニトロソ尿素(MNU)には細胞増殖抑制作用があり、我々はMNUの母動物を介したラット発達期曝露により、曝露終了時に児動物の海馬顆粒細胞層下帯(SGZ)における神経幹細胞の減少、アポトーシス及びtype-2~3 前駆細胞の増加を確認した。また、成熟期の成熟顆粒細胞の減少も確認している。本研究では、一般毒性試験の枠組みでの発達神経毒性予測系の確立のための一連の研究の一つとして、ラットを用いたMNUの28日間反復投与を行い、海馬ニューロン新生への影響を検討した。
【方法】5週齢の雄性SDラットにMNUを0, 5, 15 mg/kgの割合で28日間反復経口投与し、投与終了時の脳をパラホルムアルデヒド灌流固定した。解析としてSGZにおける顆粒細胞指標と細胞増殖指標、歯状回門における介在ニューロン指標について免疫組織化学的な陽性細胞数の変動を検討し、TUNEL染色によるSGZのアポトーシス数も求めた。
【結果】SGZにおいて15 mg/kg 投与群でGFAP(神経幹細胞)陽性細胞の減少及びTUNEL陽性細胞の増加、5,15 mg/kg投与群でTBR2(type 2前駆細胞)、DCX(type 2~3 前駆細胞)、NeuN(成熟顆粒細胞)陽性細胞の減少が確認された。介在ニューロン指標に変動はなかった。
【考察】 MNUの28日間反復投与により、低用量から増殖活性の高いtype-2~3前駆細胞を直接的に標的としたニューロン新生障害と、高用量では増殖活性の低いtype-1神経幹細胞を含むアポトーシスを介した傷害性が見出され、一般毒性試験の枠組みでDNA傷害物質による発達神経毒性の予測が可能であると判断された。発達期曝露影響との違いはtype-2~3前駆細胞への影響であり、発達期と成熟後での顆粒細胞系譜の細胞増殖活性やDNA傷害性に対する保護作用の違いを反映した結果であると推察された。
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© 2016 日本毒性学会
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