日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-66
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優秀研究発表 ポスター
軸索遠位端傷害物質グリシドールのマウスへの発達期曝露による海馬歯状回におけるニューロン新生への影響
*河嶋 将司村山 宗理長谷川 也須子渡邉 洋祐水上 さやか吉田 敏則渋谷 淳
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抄録
【背景および目的】我々は、成熟動物に対して軸索遠位端傷害を誘発するグリシドールのラットへの発達期曝露により、離乳時の児動物の海馬歯状回におけるニューロン新生部位である顆粒細胞層下帯 (SGZ)での神経突起進展段階にある未熟顆粒細胞の傷害性と、歯状回門におけるCalb2陽性細胞などのニューロン新生制御系介在ニューロン数の変動を認めた。本研究ではCalb2陽性介在ニューロンを持たないマウスにグリシドールの発達期曝露を行い、ニューロン新生傷害性におけるラットとの相違の有無を検討した。
【方法】各群9~10匹の妊娠Slc:ICRマウスに妊娠6日目よりグリシドールを0,800,1600 ppmの濃度で児動物の離乳時(生後21日目)まで飲水投与し、雄児動物を生後21日目と77日目(性成熟後)に解剖し、パラホルムアルデヒド灌流固定した脳の海馬歯状回における顆粒細胞系譜の細胞数の変動と歯状回門における各種介在ニューロンの分布を免疫組織化学的に検討した。
【結果】母動物については、高用量群で出産後7日目より歩行異常が散見され、出産後21日目までに同群の全例が発症した。歩行異常に関連して延髄背索にニューロフィラメント-L陽性のスフェロイド形成が認められた。離乳時の児動物においては、いずれの用量群においても顆粒細胞系譜および歯状回門における介在ニューロンの細胞数に変動は認められなかった。性成熟後では顆粒細胞系譜に変動はないものの、歯状回門において、高用量群でparvalbumin陽性細胞数およびNeuN陽性細胞数の減少が認められた。
【考察】マウスに対するグリシドールの発達期曝露により、児動物に対して、ラットとは異なる機序で介在ニューロンに対する直接的な遅発毒性を引き起こす可能性が示唆された。このことは、マウスとラットでの顆粒細胞系譜の毒性感受性や介在ニューロンの種類に関する種差を反映した神経毒性物質に対する反応性の違いによるものと判断された。
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© 2016 日本毒性学会
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