日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-73
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優秀研究発表 ポスター
ドパミン神経毒によるSLC30A10の誘導発現経路及びその保護効果の検討
*郷 すずな栗田 尚佳位田 雅俊神戸 大朋保住 功
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抄録
【背景・目的】マンガン(Mn)輸送体として知られる SLC30A10 の変異による家族性の高マンガン血症や慢性肝疾患を伴うパーキンソニズム及びジストニアが報告された。これまでに、パーキンソン病モデルマウス中脳におけるSlc30a10の発現の上昇が明らかになっている。しかし、種々のストレスに対する SLC30A10 の役割と、その誘導経路については明らかになっていない。そこで、1-methyl-4-phenylpiridium ion (MPP+) 誘導ストレスに対する SLC30A10 の役割およびその誘導発現経路の検討を行った。
【方法】ヒト神経芽細胞腫 (SH-SY5Y) 細胞を用いて行った。MPP+ (1 mM) やツニカマイシン (3μg/mL) 、H2O2 (0.05 mM) 曝露細胞における遺伝子発現解析をreal-time RT-PCR法を用いて行った。また、siRNAを用いて遺伝子ノックダウンを行い、ウエスタンブロットとreal-time RT-PCRでノックダウンの確認を行った。MPP+曝露による細胞生存率の変化を検討した。
【結果・考察】MPP+曝露細胞で SLC30A10 発現が上昇した。また、小胞体ストレスマーカーであるCHOPの発現が上昇したが、BIPの発現に変化はみられなかった。ツニカマイシンによる小胞体ストレス曝露細胞でも SLC30A10 の発現が上昇した。加えて、H2O2による酸化ストレス曝露では、 SLC30A10 は誘導されなかったことから、酸化ストレス経路はMPP+による SLC30A10誘導に関与しないことが示された。また、 SLC30A10 をノックダウンした細胞においてMPP+処置時の細胞生存率が低下したことから SLC30A10がMPP+による細胞死に防御的に働く可能性が示唆された。今後は、MPP+に対する SLC30A10 の防御メカニズム及び、小胞体ストレスシグナルを介した誘導経路の解明が課題である。
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© 2016 日本毒性学会
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