日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-83
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優秀研究発表 ポスター
ラット反復投与毒性試験データを用いた肝細胞肥大の毒性学的特徴の解明
*増田 茜増田 雅美保坂 卓臣佐々木 崇光吉成 浩一
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抄録
【背景】化学物質の曝露によって肝および肝細胞がしばしば肥大するが、肝細胞肥大の機序や毒性学的特徴は不明瞭である。明らかな肝毒性を示さない肝細胞肥大は適応応答(無毒性)とする見解がある一方、肝細胞肥大は肝がんの前がん病変であり毒性を示すのではないかという指摘もある。このため、化学物質の安全性評価において肝細胞肥大の毒性学的特徴の解明が必要とされている。我々は公開されている農薬のラット90日間亜急性毒性試験結果のデータベース(DB)を構築して、情報学的・統計学的解析を行い、これまでに小葉中心性とびまん性の肝細胞肥大では発現機序や毒性学的影響が異なる可能性を報告している(第42回日本毒性学会学術年会)。本研究では、肝細胞肥大に関するさらなる知見、特に肝がんとの関連性を明らかにするため、ラット2年間慢性毒性/発がん性併合試験結果を用いた解析を試みた。
【方法】食品安全委員会で公開されているラット2年間慢性毒性/発がん性併合試験結果のデータを取得し、DBを拡充した。このDBでは、毒性試験で認められた全ての所見を整理して入力し、農薬別に各所見の有無を入力した。データ解析には統計ソフトJMPを用いた。
【結果・考察】90日間と2年間のいずれの試験においても肝細胞肥大のうち小葉中心性が最も高頻度で認められた。また、2試験で共通の151農薬のデータを用いたカイ二乗検定の結果より、90日間試験の肝細胞肥大および肝肥大と、2年間試験の肝がんとの間に有意な関連性が認められた。しかし、肝がんを伴わずに肝細胞肥大を示す農薬も多数あったことから、肝細胞肥大と肝発がんの関連性の解明には、他の所見を含めた関連解析が必要であると考えられた。今後、本DBを利用したデータ解析に加えて実験的手法による機序解析を組み合せることで、肝細胞肥大と肝がんの関連性の解明が進むと期待される。
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© 2016 日本毒性学会
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