日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-82
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優秀研究発表 ポスター
トログリタゾンによる肝ミトコンドリア透過性遷移へのカルジオリピンの関与
*佐藤 智之関根 秀一瀬川 雅博齊藤 公亮斎藤 嘉朗伊藤 晃成
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抄録
【背景・目的】インスリン抵抗性を改善する新薬として開発されたチアゾリジンジオン系抗糖尿病薬であるトログリタゾン(Tro)は、重篤な肝障害により市場撤退を余儀なくされた。これまで当研究室では、Troがラット肝臓から単離したミトコンドリアにおいてミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を誘導すること、その機序にiPLA2が関与していることを報告してきた。MPTはミトコンドリアの非特異的なポア(MPTP)の開口によって引き起こされ、肝障害の発現に深く関係しているとされる。iPLA2はCa2+非依存的にリン脂質から脂肪酸を遊離させる酵素であるが、そのMPT誘導機序は不明である。そこで我々は、ミトコンドリア特異的なリン脂質で、MPTPに結合しているカルジオリピン(CL)に着目した。本研究では「iPLA2がCLを基質としてMPTPが開口する」という仮説を立て、これを検証することを目的とした。
【方法】ラット肝臓より調製したミトコンドリア懸濁液にTroを曝露し、ミトコンドリアの膨潤に伴う吸光度の変化を指標としてMPTを測定した。併せてミトコンドリアからリン脂質を抽出し、CLと、CLがもつ4本の脂肪酸側鎖のうち1本を失ったMonolysoCL(MLCL)の量比をLC-MSで調べた。
【結果・考察】本検討から、①Troを曝露してミトコンドリア膨潤を起こしたときMLCL/CL比が上昇すること、②iPLA2阻害剤であるBromoenol Lactone(BEL)の併用によりミトコンドリア膨潤とMLCL/CL比の上昇が抑制されることを見出した。このことから、TroはiPLA2を活性化し、CL⇒MLCLの変換を促進することでMPTを誘導する可能性が示された。今後、MPTPと結合しているCLがiPLA2の基質となっているのかなどについて、さらに詳細な検討を行う予定である。
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© 2016 日本毒性学会
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