日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-4
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シンポジウム1 酸化ストレスとシグナル伝達
PRLによる細胞内マグネシウムイオン量のレドックス制御
船戸 洋佑山崎 大輔*三木 裕明
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抄録
Phosphatase of regenerating liver(PRL)はヒト大腸がんの転移巣などで高発現しており、がんの悪性化を促進することが知られている。チロシンホスファターゼドメインを持つがその酵素活性は著しく弱く、分子機能の実態は長らく不明だった。PRLはその活性ドメイン内に、活性酸素によって酸化されて可逆的に分子内ジスルフィド結合を作るCys残基をペアで持っている。私たちはPRLの結合分子の網羅的探索から、進化的に保存された膜タンパク質Cyclin M(CNNM)を見つけた。CNNMの分子機能解析により、細胞内からMg2+を排出することが明らかとなり、PRLはCNNMに結合することでMg2+排出を阻害した。細胞を過酸化水素等で細胞を刺激すると、PRLが酸化されてCNNMから解離し、Mg2+排出阻害もキャンセルされた。つまり、PRLはレドックス状態応答性に細胞内Mg2+量を調節することが明らかとなった。がん悪性化における重要性を調べるため、腸上皮で強く発現するCNNM4の遺伝子欠損マウスを作成して、腸に多数のポリープを自然に作るAPC遺伝子ヘテロ欠損マウスと掛け合わせた、その結果、通常粘膜内に留まっている腫瘍細胞が筋層にまで浸潤して悪性化していることも分かった。本シンポジウムでは、このPRL/CNNMによるMg2+調節のがん悪性化における重要性や、また最近見つけたPRLのレドックス応答性Cysに起こっているユニークな化学修飾による分子機能調節についても述べる。
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© 2016 日本毒性学会
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