日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-2
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シンポジウム10 ナノマテリアルの実用化に呼応した有害性評価の進捗
機序に基づくナノマテリアルの発がん性評価法の開発
*津田 洋幸徐 結荀William ALEXANDERDavid ALEXANDERMohamed ABDEL GIED沼野 琢旬酒々井 真澄二口 充深町 勝巳広瀬 明彦菅野 純
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抄録
金属と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の発がん性の効率的評価法について、ラットを用いて、以下の方法を試みた。1)マクロファージ(Mp)負荷試験:初代培養ラット肺Mp培地に検体MWCNTを加えてMpに貪食させて得られた上清は、ヒト由来のA549(肺がん細胞)、Met5A(中皮細胞)、MESO-1/2(悪性中皮腫細胞—上皮型/肉腫型)に対して増殖活性を示した。一方、肺線維芽細胞、肝癌、腎癌、卵巣癌、乳癌細胞に対する増殖活性は無かった。またMWCNTを貪食した培養Mpには炎症と細胞増殖に関与するサイトカインIL2、IL18、CCL2-5等が検出された。
2)肺内噴霧投与(TIPS法)によるMWCNT投与後の肺と胸膜の炎症・細胞増殖機序解析:MWCNT-7(IARC 分類G2B)およびcrocidolite (UICC grade)(IARC 分類G1)は遷延性の肺胞炎症と臓側胸膜中皮の増殖を惹起させた。肺と胸腔洗浄液中にはMWCNTと炎症細胞(Mφ、好中球、リンパ球等の合計)の浸出も持続して観察された。肺組織と胸腔洗浄液には炎症性IL種とCCL種が対照より高値であった。
3)短期投与後2年までの長期観察:この方法でMWCNT3種に肺がん及び悪性中皮腫の発生が見られた。
 以上から、Mpのin vitro負荷試験とin vivo 短期試験で見られたサイトカイン類IL2、IL18、CCL等は、肺炎症の遷延と中皮細胞の増殖活性、さらに肺と中皮における発がんに関与していると考えられた。特にCCL3はヒトのアスベスト暴露者血清でも増加していること(Xu, Cancer Science 2015)から、この方法は機序の面から人に外挿できる金属と炭素ナノマテリアルへの暴露と発がん評価モデルとして注目される。
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© 2016 日本毒性学会
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