日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-1
会議情報

シンポジウム11 バイオ医薬の品質および不純物管理に係わる安全性評価:現状と未来
バイオ医薬品の不純物評価・管理の概要
*石井 明子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

バイオ医薬品(組換えタンパク質医薬品)は,目的物質を発現する組換え細胞の培養,及び,細胞あるいは細胞培養上清からの目的物質の精製工程を経て,製造される.バイオ医薬品原薬の構成要素には,目的物質,目的物質関連物質の他,目的物質由来不純物,製造工程由来不純物が含まれる.目的物質由来不純物は,目的物質の分子変化体(前駆体,製造中や保存中に生成する分解物,凝集体,アミノ酸配列変異体等)で,生物活性,有効性及び安全性の点で目的物質に匹敵する特性を持たないものである.製造工程由来不純物には,細胞基材に由来するもの(宿主細胞由来タンパク質,DNA等),細胞培養液に由来するもの,あるいは細胞培養以降の工程である目的物質の抽出,分離,加工,精製工程に由来するもの(試薬・試液類,クロマトグラフ用担体からの漏出物等)がある.これらの不純物の評価・管理については,ICH Q6Bガイドラインに基本的な考え方が示されているが,具体的な許容値や管理値は示されていない.バイオ医薬品開発に際して,中間体,原薬,あるいは製剤を対象とした特性解析により,各種不純物の存在と残存量が明らかにされ,製剤中の不純物含量が安全性に影響のない値以下に管理できるよう,原材料の管理,工程パラメータ管理,工程内試験,規格及び試験方法等からなる品質管理戦略が構築される.不純物の管理値については,最終的には,臨床試験に用いたロットにおける不純物含量等をもとに決定されている.不純物の安全性への影響は,製剤の投与経路等によっても異なる場合があるので,各製品の意図した用途に応じた品質管理戦略が必要である.本講演では,バイオ医薬品に含まれる各不純物の特徴,不純物が問題となった事例,及び,不純物管理戦略の概要を述べ,不純物に焦点をあてたバイオ医薬品品質管理の現状と課題を考察したい.

著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top