日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S11-3
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シンポジウム11 バイオ医薬の品質および不純物管理に係わる安全性評価:現状と未来
シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質保証
*奥村 剛宏
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抄録

医薬品の製造業界においては、バイオ医薬品や再生医療等医薬品の製造にシングルユースシステム(SUS)が使用されるようになっている。製造の生産性向上や交叉汚染の減少などの利点がある一方、SUS由来の抽出物・溶出物、微粒子に加え、完全性、無菌性などバイオ医薬品の品質に直接的、間接的に与える影響が懸念される。
SUS製品(バック、フイルター、チューブなど)の特徴は、その品質がサプライヤーの品質保証システムに依存していることである。従って、サプライヤーへの技術訪問や監査によりリスク評価を行い、その結果にもとづいて適切にサプライヤーを管理することが求められる。医薬品の品質や製造に影響を与える製品のサプライヤー/製造サイトとは品質契約を締結し、定期的に監査をすることが望ましい。
また、単回使用であるため、ユーザーは、通常、受入れ試験で使用前に品質を確認することができない。SUS製品の設計段階からユーザーとサプライヤーで緊密に協議してユーザー仕様要件を確立することが、SUSに対する品質管理の重要な要素である。サプライヤーから、当該SUS製品の適格性評価データ、抽出物・溶出物に関する評価結果、リーク試験条件や無菌性保証のバリデーションデータなどの技術情報の提供を受け、サプライヤーと協議を行ないながら、その品質管理戦略を構築する。抽出物・溶出物についても各サプライヤーが取得したデータをもとにリスク評価を行ない、追加実験の要否や毒性評価の結果を判断する必要がある。
また、バイオ医薬品の安定供給のためには、SUS製品の入手性などビジネス面での評価も必要になるため、試験部門だけでなく製造部門や購買部門を含めた総合的な戦略が必要である。
2015年、厚労省研究班では、産官学の共同で、「シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品の品質確保に関する提言書」がまとめられ、現在、国内外の関係者から広く意見を求めている。

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© 2016 日本毒性学会
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