日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-2
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シンポジウム20 遺伝毒性の逆襲:遺伝毒性試験から発がん性と発がんリスクを予測する
レポーター遺伝子導入動物を用いた発がん性予測のためのアプローチ
*梅村 隆志
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抄録
 近年、レポーター遺伝子を導入したマウスやラットが開発され、in vivo変異原性試験の新たなツールとして注目されている。このレポーター遺伝子突然変異試験では、げっ歯類を用いた発がん性試験と同一の種、系統、投与経路、投与量を選択でき、発がん標的臓器での変異原性を検索できることから、遺伝毒性と発がん性との関連性を考える上で貴重なデータが得られるものと期待されている。そのような背景から本シンポジウムでは、レポーター遺伝子導入動物を用いた発がん性予測の可能性並びに問題点について考察する。化学物質の発がん性は通常、雌雄のマウスあるいはラットに複数の用量を長期間反復投与し、全身臓器を病理組織学的に検索して腫瘍性病変の発生頻度を基に判断される。そのため、発がん性の有無のみならず標的臓器や発がん用量に種差や雌雄差がしばしば生じる。元来、げっ歯類を用いた発がん性試験結果は化学物質のヒトにおける発がん性を予測しているに過ぎないことから、そこで生じた様々な差異自体の意義については議論のあるところではある。しかしここでは、これまで報告されているげっ歯類を用いた発がん性試験結果と当研究室で実施してきた gpt deltaマウスあるいはラットのデータとの一致性に焦点を当てて、レポーター遺伝子動物による発がん性予測の可能性を探る。また、ヒトへの外挿性を考察するための発がん機序解明を目的に、DNA修飾、アポトーシスあるいは細胞周期関連遺伝子のシグナル伝達経路の活性化等、発がんに関与する様々な因子をレポーター遺伝子突然変異と共に検索する試みを紹介する。
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© 2016 日本毒性学会
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