日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-3
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シンポジウム21 心循環器毒性-非臨床から臨床へ、臨床からのフィードバック
臨床試験における心電図解析を中心とした心毒性評価
*品川 香
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抄録
催不整脈リスクの検出は、新薬の開発段階における重要な課題であるため、臨床及び非臨床試験における潜在的な催不整脈リスク評価に関するE14及びS7Bガイドライン(GL)が、2005年にICHで合意され、日本でも2009年に発出され2010年11月より施行されている。E14 GL施行後にQT延長リスクが原因で市場から撤退した薬剤はなく、GLは一定の成果を上げたと言えるが、サロゲートマーカーとしてのQT延長の特異性に基づく限界やQT/QTc評価試験(TQT)に伴う種々の負担から、より効率的でより特異的な評価法が研究されてきた。臨床試験については、TQTの代わりとして、早期臨床試験における薬物濃度-反応モデル (Concentration- Response modeling: CR モデリング)に基づく評価法を利用することについての、E14 GLのQ&A改訂版が、2015年12月にICHで合意された。現在、国内でも本評価法を受け入れるための体制の準備段階である。第I相試験では高用量の曝露下での情報が得られるため、全用量における全てのデータを用いる、CRモデリングに基づく評価法には利点がある。しかしながら、本評価法は必ずしも全ての薬剤に適切とは限らず、活性代謝物や蓄積性のある薬剤、心拍数への影響がみられる薬剤等のように、本評価法が適さない場合がある。又、臨床用量の相当倍までの曝露下での評価であることが特に重要である。さらに、心電図の計測、解析方法も含めて、TQTと同程度の臨床試験の質が担保される必要がある。陽性対照は必須とはされないが、陽性対照を用いない場合には、試験の質が担保されていることを示す他の方策を講じる必要がある。本講演では、CRモデリングによるQT延長リスク評価を実施する際の留意点に関する考察も含めて、催不整脈リスク評価の将来展望について、臨床試験における心電図評価を中心に議論したい。
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© 2016 日本毒性学会
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