日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-7
会議情報

ワークショップ2 ICH S1がん原性試験ガイドライン改定に係る前向き調査におけるがん原性評価文書(CAD)の中間評価と薬理作用及び標的臓器からみた発がん
医薬品の薬理作用からの発がん予測の可能性と課題
*青木 豊彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1992年に日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会(JPMA)が編集した内部資料集「遺伝毒性を示さない化学物質(医薬品)の発がん性評価」には,PPARα作動薬による肝腫瘍,D2阻害薬による乳腺腫瘍,酸分泌抑制薬による胃カルチノイド腫瘍などについて,がん原性試験成績や機序解明(MOA)に関する知見がまとめられている。本資料集は発行されて既に約20年余が経過し,この間,新規の薬理作用に基づく薬剤クラスの治療薬が開発されてきたことから,JPMAは発がん機序に関する文献等の新たな公開情報を網羅的に取りまとめた改定作業を2012年から着手し,2016年初めの改訂版の発行に至った。改訂版ではα-グルコシダーゼ阻害薬,SGLT2阻害薬,GLP-1作動薬,PPARγ,α/γ作動薬などの新規薬剤クラスの情報も盛り込んでいる。これらの薬剤においても薬剤クラス共通のげっ歯類特異的な腫瘍の発生が報告され,発がん性と薬理作用との密接な関係を示す科学的知見がさらに蓄積されている。現在,ICHでは,薬理作用を含む種々の証拠の重み付け(WOE)要素に基づいたがん原性予測(カテゴリー分類)を前向き調査により検証中である。その結果を受けて将来,がん原性試験評価法が改定され,ラットがん原性試験実施が免除される場合,薬理作用からの発がん予測と予測精度の向上は製薬企業や規制当局のさらなる関心事項であるだけではなく,薬剤を服用する患者にとっても極めて重要な事項である。発表では,例えば,薬効標的,発がん懸念のある組織での細胞増殖性検討といったMOAのための追加試験の有用性や,ユニークな新規メカニズムの薬剤クラス(first-in-class)でのがん原性予測はどうすればいいのか,などの課題を考えてみたい。

著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top