日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-1
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ワークショップ3 ネオニコチノイド研究とリスク評価の最前線 ~ミツバチからヒトの社会まで~
ミツバチに対する農薬の影響~現状の問題と回避策
*中村 純
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抄録

「ミツバチ-農薬」問題は,ミツバチ,あるいは養蜂産業の立場では,ネオニコチノイド系農薬登場以前から,1世紀以上にわたって未解決のままになっている問題でもある.本来,農作物は野生のハナバチ類に送粉を依存していたが,農地開発などによりハナバチ類が生息場所と資源を失って激減し,家畜昆虫であるミツバチが農地に導入されるようになった.結果として,送粉目的のミツバチと植物保護目的の農薬という農業生産を向上させる資材間での「接点」が発生して問題化してきた.
現在注目を集めているネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響評価は,実に多様な結果となり,主要3剤のリスク評価のために2か年間の使用規制を実施したEUでは,評価のためにあと1年間を追加することになった.殺虫剤である以上,高濃度での影響は必然だが,ネオニコチノイド系農薬の浸透移行性に基づいた,地中から花粉や花蜜に移行した成分への曝露,つまり低用量での影響については,実験室内とフィールドでの評価が矛盾することも多い.これはミツバチという生物の特性に基づく部分も大きいが,室内試験では,曝露後の影響を見ることになるのに対して,フィールド試験では暴露経路が評価全体に大きな影響を示すためでもある.
農薬被害の軽減対策としての抜本的な解決策は,結局のところミツバチと農薬との接点の回避であり,そのためには曝露様式の解明が重要な位置づけとなる.農薬の使用方法・散布規模などは地域や農業様式によっても異なり,ミツバチがどのように農薬に曝露するかはローカルな事情に大きく依存するため,実験室での成果を外挿しにくい.
そこで,本講では,「ミツバチ-農薬」問題をどう扱い,また解決はどのような方向性を持っているのか,これまで得られてきたさまざまな情報を概観しつつ,総合的な解説を試みたい.

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© 2016 日本毒性学会
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