日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-17
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一般演題 口演
遺伝子改変出芽酵母を用いた医薬品アシルグルクロン酸抱合体合成技術の開発
*生城 真一西川 美宇増山 優香藤井 美春安田 佳織濱田 昌弘中島 範行榊 利之
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抄録
【背景・目的】医薬品開発の探索段階における代謝物の同定及び安全性評価には、相当量の代謝物合成が必要である。特にカルボキシル基を有する化合物においては薬物代謝第Ⅱ相酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)によって反応性代謝物であるアシルグルクロン酸抱合体の生成が予想されるが、従来の有機合成による抱合体調製は多くの場合困難を伴う。我々はより簡便でかつ安価な方法としてグルクロン酸抱合能を有する出芽酵母株を用いた医薬品アシル抱合体の酵素合成技術の開発をおこなった。
【方法】UDP-グルコース脱水素酵素遺伝子を酵母染色体に導入した出芽酵母株(Saccharomyces cerevisiae AH22)を用いて、ヒトを含めた哺乳動物由来の基質特異性の異なるUGT分子種(46種)を有する酵母株を構築した。静止菌体による様々な非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)のアシル抱合体生成についてHPLCを用いて測定した。ジクロフェナクについては大量合成、精製をおこないLC-MS及びNMRによる構造決定をおこなった。
【結果・考察】基質特異性の異なるUGT分子種有する酵母株を選択することにより、メフェナム酸、フルフェナム酸、ゾメピラックなどのNSAIDsのアシル抱合体を効率よく合成することに成功した。また、フェノール性水酸基を有するミコフェノール酸については、ラット由来UGT2B1によって選択的にアシル抱合体を合成した。ジクロフェナクのアシル抱合体については、UGT2B1分子種を用いることにより収率21%及び純度96%の精製標品を得ることができ、NMR測定によりグルクロン酸C1炭素へのβ位エステル結合を確認した。
以上のように、異なる基質特異性を示すグルクロン酸抱合能を有する出芽酵母システムを用いることにより、医薬品開発の探索段階における多種類にわたる候補化合物のアシル抱合体合成を可能にした。
【文献】 Ikushiro S, Nishikawa M, Masuyama, Y, Yasuda K, Sakaki T, et al., Biosynthesis of Drug Glucuronide Metabolites in the Budding Yeast Saccharomyces cerevisiae. Molecular Pharmaceutics 13, 2274-2284 (2016)
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© 2017 日本毒性学会
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