日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-30
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一般演題 口演
都市河川水中のヒト用医薬品の実測濃度と予測濃度
*鈴木 俊也小杉 有希渡邊 喜美代保坂 三継西村 哲治広瀬 明彦
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抄録
【目的】既に欧米ではヒト用の新医薬品の開発時に環境影響評価(ERA)が義務付けられている。我が国でも、平成28年3月末に厚生労働省医薬・生活衛生局より「新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」が通知され、ヒト用の医薬品も他の化学物質と同様に、ERAを検討する必要があることが明記された。今回、我々は、全国の主要都市の7河川を対象に、既に上市されているヒト用医薬品の存在実態調査を行い、各河川水中の実測濃度(MEC)を求めるとともに、予測濃度(PEC)と比較検討した。
【方法】ヒト用医薬品等(PPCPs)30種類(解熱鎮痛消炎、抗アレルギー、抗てんかん、高脂血症治療、高血圧治療、糖尿病治療、認知症治療薬など)及び下水混入の指標として人工甘味料スクラロースを測定対象物質とした。調査対象河川は、全国の主要都市の7河川(筑後川:久留米、多摩川:東京、豊平川:札幌、広瀬川:仙台、桂川:京都、庄内川:名古屋、鶴見川:横浜)であった。河川水試料は、2015年10月から2106年12月にかけて1河川あたり四季ごとに1回採水した。試験溶液の調製は、固相抽出(SPE)法により行い、試験溶液は-20℃で保存し、測定対象物質の分析は、 LC/MS/MS法により行った。PECの算出は、European Medicines Agency (EMEA)のガイドラインに基づき行った。
【結果および考察】下水処理水が流入している地点で採取した河川水では、検出されるPPCPsの数と濃度が比較的高く、イルベサルタン、エピナスチン、クラリスロマイシン、クロタミトン、ケトプロフェン、スルピリド、バルサルタン、ベザフィブラートおよびオルメサルタンが数百ng/Lの濃度で検出された。スクラロースは、ほとんど全ての河川水から検出され、その濃度は数~数百ng/Lのオーダーであった。調査対象の河川水の中で、多摩川、鶴見川および新川で検出されたPPCPsの濃度の合計値およびスクラロースの濃度は、その他の河川水に比べて高かった。河川水中の調査対象のPPCPsのMECをEMEAのガイドラインに基づき算出したPECと比較したところ、エピナスチン、オルメサルタン、カンデサルタン、ロスバスタチンおよびロラゼパムは、MEC/PEC > 1となる場合があることがわかった。また、バルサルタンのMEC/PECは、最高で0.5であった。
 EMEAのガイドラインに基づき算出したPECでは、MECを下回る場合があった。今後、厚生労働省のガイダンスよりPECを算出し、MECと比較検討する予定である。
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© 2017 日本毒性学会
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