日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-38
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一般演題 口演
セロトニン症候群モデルラットにおける筋肉の異常収縮と血漿メタボローム・プロファイルの関連性
*財津 桂野田 沙樹林 由美大原 倫美井口 亮草野 麻衣子佐藤 貴子土橋 均石川 哲也鈴木 廣一石井 晃
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抄録

【目的】セロトニン症候群(SS)は、SSRIの過剰摂取等から脳内セロトニン濃度が上昇して発症するとされ、重篤の場合には異常高体温が観察される。我々は以前、SSモデルラットでは血漿中の多数のメタボライトが対照群に比べて有意に上昇することや、異常高体温と筋肉の異常収縮の関連を本学会で報告した。そこで、この原因を更に追究する為、SSモデルラットの血漿、肝臓及び骨格筋(腓腹筋)についてメタボローム解析を行った。【実験方法】6週齢のWistar系雄性ラットを投与2時間前から絶食し、5-HTP DMSO溶液、Clorgyline saline溶液を腹腔内投与してモデルを作成した。対照群には同量のDMSOとsalineを投与した。投与前後で直腸温を測定し、投与35分後に解剖を行い、血漿、肝臓および腓腹筋を採取後、急速凍結した。臓器試料は氷冷MeOHを加えてホモジナイズし、遠心分離後の上清及び血漿にISを加えて溶媒抽出した。遠心濃縮及び凍結乾燥後、誘導体化を行い、島津製作所製 GCMS-TQ8040を用いてメタボローム解析を行った。さらに腓腹筋についてはqRT-PCRによるUCP-3の遺伝子発現解析を行った。【結果】投与35分後にモデル群の直腸温は約40℃に上昇し、対照群と有意差を示した。メタボローム解析の結果、モデルの腓腹筋では異常収縮に伴い、嫌気呼吸が亢進していることが示唆され、かつ、UCP-3が有意に上昇したことから、筋肉の異常収縮が異常高体温に寄与することが示唆された。肝臓では尿素の蓄積に加え、尿素回路構成成分の有意な変動が観察され、筋肉の異常収縮に伴うタンパク質・アミノ酸の異化によって尿素回路に変動が生じたと考えられた。血漿ではアミノ酸やTCA回路構成成分を含めた79成分が有意に上昇し、筋肉の異常収縮とそれに伴う嫌気呼吸の亢進の結果、血漿中に上記のメタボライトが蓄積すると考えられた。

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© 2017 日本毒性学会
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