日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-39
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一般演題 口演
バルプロ酸による脂肪肝のメカニズム解析及び血漿中バイオマーカー探索
*齊藤 公亮斎藤 嘉朗
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抄録
【緒言】非臨床において脂肪肝を誘発した化合物が,臨床で肝障害を引き起こす事例は医薬品の開発においてしばしば経験する事象である。分岐鎖脂肪酸の抗てんかん薬であるバルプロ酸は,臨床において脂肪肝及びそれに伴う劇症肝炎を引き起こすことが知られているが,これらの発生機序あるいは予見性のあるマーカーに関しては,一定の見解は得られていない。そのため,バルプロ酸による脂肪肝に関するメカニズム解析及び血漿中バイオマーカー探索は,医薬品開発上,有用な知見となることが期待される。そこで我々は,脂質メタボロミクスを利用し,バルプロ酸による脂肪肝に関与するバイオマーカー探索を行った。
【方法】雄性SDラット (投与開始時6週齢,8匹/群/解剖時点) に3あるいは14日間,バルプロ酸 (250及び500 mg/kg) を反復腹腔内投与し,血液及び肝臓を採取した。試料中のリン脂質,スフィンゴ脂質及び中性脂質を超高性能液体クロマトグラフによって分離後,フーリエ変換型質量分析計を用いて測定した。3日間反復投与後のバルプロ酸投与群及び媒体投与群間で多変量解析 (OPLS-DA)を行い,S-plotによってバイオマーカー候補を探索した。
【結果】バルプロ酸投与により,肝臓中の中性脂質は増加しており,250 mg/kg群ではDay 15で,500 mg/kg群ではDay 4で脂肪肝が引き起こされていると考えられた。用量相関が認められたDay 4のデータを用いて多変量解析を行った結果,肝臓中ではカルジオリピンの増加及び高度不飽和脂肪酸 (PUFA) 含有PCの減少が認められた。また血漿を用いて同様の解析を行った場合,カルジオリピン及びPUFA含有PCの変動には相関傾向が認められた。以上の結果より,バルプロ酸による脂肪肝において,カルジオリピン及びPUFA含有PCが血漿中バイオマーカーとなり得ると考えられた。
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© 2017 日本毒性学会
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