日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-1
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優秀研究発表 ポスター
ヒト肝臓キメラマウス(PXBマウス®)を用いたTRAIL-R2/death receptor 5アゴニスト抗体の肝毒性評価及び網羅的遺伝子解析による機序解明
*仁平 開人小野 擁子南谷 賢一郎加国 雅和吉川 幸孝太田 紀夫日浦 政則吉成 浩一
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抄録
Death receptorファミリーの一つとして知られるtumor necrosis factor (TNF)-related apoptosis-inducing ligand receptor 2 (TRAIL-R2)の活性化は,癌細胞にアポトーシスを誘導しうる有望な抗癌薬標的と考えられている.しかしながら,TRAIL-R2の活性化を標的とした複数の医薬品の開発において肝毒性が報告されており、肝毒性の発現機序やTRAIL-R2活性化の寄与は明らかでない.本研究では,近年in vivo肝毒性評価モデルとして注目されているヒト肝臓キメラマウス(PXBマウス®)を用いて,TRAIL-R2アゴニスト抗体(KMTR2)の肝細胞傷害作用について検討した.PXBマウス®にKMTR2 (1 or 10 mg/kg)を単回静脈内投与し,血液生化学検査,病理組織学検査,ヒト/マウス遺伝子を区別した次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を実施した.血液生化学検査では,PXBマウス®へのKMTR2の投与による血中AST/ALT活性の上昇とヒト特異的ALT1濃度の増加が認められた.肝臓の病理組織学検査では,肝細胞死及び肝細胞変性がヒト肝細胞特異的に認められた.更に,TUNEL法及びcleaved caspase-3染色によりヒト肝細胞領域におけるアポトーシスの誘導を確認した.RNA-seq解析では,生物学的機能に紐づいた遺伝子群の発現変動にヒトとマウスで違いが認められた.また,ヒトにおいてTRAIL-R2シグナルの活性化を示唆する遺伝子発現変動が認められた一方,マウスではそれら遺伝子の発現変動は認められなかった.以上より,KMTR2によるTRAIL-R2の活性化は,PXBマウス®のヒト肝細胞特異的にアポトーシスを誘導し,肝細胞傷害を誘発したと考えられた.臨床で認められたTRAIL-R2活性化抗体による肝毒性を再現できたと考えられることから,抗体医薬品の肝毒性リスクをin vivoにおいて評価するツールとしてヒト肝臓キメラマウスの利用が期待される.
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© 2017 日本毒性学会
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