日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-136
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一般演題 ポスター
血管内皮細胞の増殖を強力に促進する有機-無機ハイブリッド分子
*中村 武浩吉田 映子滝田 良内山 真伸鍜冶 利幸
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抄録
【目的】血管内皮細胞は,血管のトーヌスや血液凝固線溶系を調節するだけでなく,血液と血管内皮下組織を隔てる障壁としても機能している。内皮細胞の増殖を促進する細胞増殖因子はいくつか知られているが,同様の活性を有する低分子量化合物は知られていない。我々は,無機亜鉛が内皮細胞の増殖活性を上昇させることを見出しているが,無機亜鉛の非特異的作用のため解析が難しくそのメカニズムの解明に至っていない。有機-無機ハイブリッド分子は有機化合物と無機化合物の特性を併せ持ち,特異な生物活性をもたらすことが可能である。本研究の目的は,構築した亜鉛金属錯体ライブラリーの中から内皮細胞の増殖を制御する化合物を探索することである。
【方法】32種の亜鉛錯体から成る亜鉛錯体ライブラリーを構築した。ウシ大動脈血管内皮細胞の増殖促進活性は酸不溶性画分への[3H]Thymidineの取り込みにより評価した。細胞傷害性は形態学的観察およびLDH逸脱量により評価し,細胞内金属蓄積量にはICP-MSを用いた。
【結果および考察】ライブラリーより細胞傷害性がなく強力な増殖促進作用を持つ亜鉛錯体としてZn-12[Zn(2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)Cl2]を見出した。内皮細胞増殖促進活性は無機亜鉛よりも顕著に強く,配位子では認められなかった。Zn-12および無機亜鉛の間に,亜鉛の細胞内蓄積量の有意な差は認められなかった。Zn-12の増殖促進活性はFGF-2およびVEGFよりも強く,一部は内因性FGF-2の活性に依存していることが示唆された。強力な内皮細胞増殖促進活性を有する低分子量化合物はこれまでになく,本研究は有機-無機ハイブリッド分子の新たな可能性を示すものである。
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© 2017 日本毒性学会
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