日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-137
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一般演題 ポスター
銅錯体による血管平滑筋細胞のメタロチオネイン発現の誘導
*藤江 智也二宮 早紀中 寛史鍜冶 利幸山本 千夏
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抄録
【目的】血管平滑筋細胞は,血管の中膜を構成するcell typeである。血管平滑筋細胞の機能障害は,様々な血管病変の基礎疾患として知られる動脈硬化病変の進展過程に深く関わっているので,血管平滑筋細胞の防御機構に関する理解は重要である。メタロチオネイン(MT)は,多様な機能を有する生体防御タンパク質である。MTの誘導機構は転写因子MTF-1の活性化が不可欠であること以外の詳細は不明である。これまでに我々は,銅錯体Cu(edtc)2(Cu10)を活用し,内皮細胞のMT誘導機構を明らかにしてきている。本研究では,Cu10による血管平滑筋細胞のMT誘導機構を解析した。【方法】培養ウシ大動脈平滑筋細胞をCu10で処理し,MT-1/2タンパク質の発現はWestern blot法により評価した。MT-1A,MT-1E,MT-2A mRNA発現はreal-time RT-PCR法により解析した。siRNAはリポフェクション法により導入した。【結果・考察】血管平滑筋細胞においてもCu10の処理濃度および時間に依存してMT-1/2タンパク質発現の上昇が認められた。このとき,Cu10により全てのMTアイソフォーム mRNA発現が上昇していた。MTF-1をノックダウンした平滑筋細胞をCu10で処理したとき,Cu10によるMT誘導は抑制された。しかしながら,Nrf2をノックダウンしたとき,Cu10による血管平滑筋細胞のMTは抑制されなかった。以上の結果より,Cu10は内皮細胞だけでなく血管平滑筋細胞のMTも誘導すること,さらにその誘導はMTF-1-MRE経路を介在するが,Nrf2-ARE経路を介在しないことが示唆された。我々はこれまでに,内皮細胞のMT-1誘導はNrf2-ARE経路によって制御されることを明らかにしており,この結果は血管平滑筋細胞が内皮細胞と異なるMT誘導機構を備えている可能性を示している。
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© 2017 日本毒性学会
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