日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-190
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明暗シフトによる概日リズム攪乱が及ぼす精巣機能障害
*三浦 伸彦吉岡 弘毅大谷 勝己北條 理恵子
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抄録
【背景】概日リズムは約1日のリズムを形成する生命の恒常性維持に必須のシステムであり、バクテリアからヒトまで広く保存されている。概日リズムは主に光による制御を受けるため、夜間に光に曝露され続けると概日リズムの攪乱が起こる。概日リズムの攪乱は高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病をはじめとした健康障害を引き起こし、最近は発がんとの関連も明らかにされつつある。我々は明暗条件を変化させ概日リズム攪乱を誘発した結果、精巣機能が低下することを見出したので報告する。
【方法】雄性C57BL/6Jマウス(7週齢)を通常明暗条件(12時間の明暗)および明暗シフト条件(2日ごとに明暗を12時間逆転)で1, 3, 9, 12週間飼育した後、精巣および精巣上体尾部を得て精巣機能を解析した。精子形成に関わる血漿中性ホルモン濃度はELISA法により測定した。
【結果・考察】通常明暗条件群のマウスの行動活性(自発的行動)は暗期に明確に高く明確な概日リズムを示したが、明暗シフト条件群では概日リズムが攪乱していることを確認した。精巣および精巣上体尾部の精子数は、明暗開始6週間後から有意に低下し12週間後まで低下が観察された。精子運動能も同様に、6週間後に有意に低下し、その低下は12週間後まで持続した。血漿中テストステロン濃度は通常明暗条件群では性成熟に伴うと思われる経時的な上昇を示したが、明暗シフト群では有意に低下しその上昇は認められなかった。他の性ホルモン(LH, FSH, GnRH)濃度の有意な増減は観察されなかった。以上の結果は、生体リズムの攪乱により雄性生殖機能が低下する可能性を示す。
【意義】夜間の光曝露は現代社会の特有の現象であり、夜勤を伴う交代勤務や、24時間社会による街中や家中での夜間光曝露の機会が激増していると言える。我々が提示する結果は、労働衛生学分野、公衆衛生学分野で注意を払うべき課題と考える。
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© 2017 日本毒性学会
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