日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-209
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ダントロレンの代謝酵素と肝障害の原因と考えられる反応性代謝物の生成経路の解明
*深見 達基天野 貴之後藤 紗希廣瀬 大祐谷口 剛史中島 美紀
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抄録
【目的】骨格筋弛緩薬であるダントロレンは、副作用として稀に重篤な肝障害を発症することが報告されている。その副作用発症メカニズムとして代謝物の関与が示唆されているものの、ダントロレン代謝反応を触媒する酵素は明らかにされていなかった。本研究では、ヒトにおけるダントロレン誘導性肝障害発症の鍵と考えられるダントロレン還元酵素およびアセチル化酵素を明らかにし、反応性代謝物と示唆されるヒドロキシルアミン体がどのような代謝過程により生成されるか明らかにすることを目的とした。【方法】ダントロレン還元酵素活性測定はヒト肝臓ミクロソーム (HLM) および肝臓サイトゾル (HLC) を酵素源として、アミノダントロレンのアセチル化酵素活性測定はN-アセチルトランスフェラーゼ (NAT) 1 またはNAT2 バキュロウイルス発現系を酵素源として、グルタチオン抱合体の検出はHLCを酵素源に還元型グルタチオン(GSH) を用いて、LC-MS/MSにより行った。【結果および考察】ヒトで認められる代謝物アセチルアミノダントロレンは、ダントロレンのニトロ基がアルデヒドオキシダーゼ1 (AOX1) によって還元されてアミノダントロレンとなり、続いてNAT2によりアセチル化されることにより生じることを、ヒト肝臓試料や発現系を用いた検討により明らかにした。反応性代謝物と示唆されるヒドロキシルアミン体は不安定なため検出が困難である。そこで、還元型グルタチオンを用いたトラップ試験によりヒドロキシルアミン体を検出する方法を確立し、生成反応経路を精査したところ、ヒドロキシルアミン体はAOX1によるダントロレン還元反応の中間体として生成することを明らかにした。ヒト肝臓におけるAOX酵素活性には大きな個人差が認められることから、還元酵素活性の個人差がダントロレン誘導性肝障害の感受性に関与している可能性が考えられた。
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© 2017 日本毒性学会
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