日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-210
会議情報

一般演題 ポスター
ラット、マウスおよびヒトの主要モルヒネUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) 分子種の酵素反応速度論的解析による比較
*沖 大貴栗田 歩実宮内 優生城 真一Peter I. MACKENZIE石井 祐次
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】医療麻薬モルヒネは、主にグルクロン酸抱合によって代謝され、これを触媒するUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) は、ヒトでは主にUGT2B7と考えられている。一方、ラットでは、UGT2B1がこの反応を触媒することが知られている。最近、演者らは、マウスの主要なモルヒネ抱合酵素がUgt2b36であることを報告した (1)。モルヒネ抱合活性には著しい種差があるため、各々の動物種におけるモルヒネ抱合酵素の特性を評価することはモルヒネの適正使用や UGT の機能解明に役立つ。そこで本研究では、ラットUGT2B1、マウスUgt2b36によるモルヒネ抱合の酵素反応速度論的解析を行い、ヒト UGT2B7 と比較した。
【方法】FVB 系雄性マウス肝およびSprague-Dawley系雄性ラット肝から RT-PCR により、Ugt2b36および UGT2B1 の cDNA をそれぞれ増幅し、バキュロウィルス-Sf9 発現系を用いて UGT 発現ミクロゾームを得た。また、既にクローン化したUGT2B7からも同様に発現ミクロゾームを得た。これら分子種に共通のエピトープを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティングにより UGT の相対含量をノーマライズし、これらのUGT発現ミクロゾームを酵素源としてモルヒネ抱合活性を蛍光HPLC法にて測定した。
【結果・考察】ラット UGT2B1、マウス Ugt2b36およびヒト UGT2B7の発現ミクロゾームを用いて、モルヒネ抱合活性の酵素反応速度論的解析を行い、パラメーターを比較した。Km を比較した時、マウス Ugt2b36が最も低く、ラット UGT2B1 とヒト UGT2B7 の Km は、マウス Ugt2b36 の約3倍程度大きかった。一方、Vmax は UGT2B1>Ugt2b36>UGT2B7 の順であった。固有クリアランスでは、ラットUGT2B1は、マウスUgt2b36と遜色ないものの、UGT2B7ではこれらの20分の1程度であった。マウス、ラットおよびヒトの主要なモルヒネ抱合酵素の機能は著しく異なっており、これが活性の著しい種差を一部説明できると考えられた。
【文献】1) Kurita A., et al. (2017) J. Pharmacol. Exp. Ther., in press
著者関連情報
© 2017 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top