日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-212
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ヒト人工多能性幹細胞由来肝細胞のゲノムのメチル化及び遺伝子発現の網羅的な解析
金 秀良堀内 新一郎黒田 幸恵内田 翔子関野 祐子Jane SYNNERGREN*石田 誠一
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抄録
[目的] 医薬品候補化合物のin vitro薬物代謝試験や毒性試験にはヒト肝細胞が多用されているが、ヒト肝細胞の供給が限定されるため、それに代わる試験系の構築が待たれている。ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)は増殖性に優れ、様々な細胞への分化が可能であることからin vitro試験に供する肝細胞の供給源として期待されている。市販されているhiPSC由来肝細胞について網羅的遺伝子発現解析、ゲノムDNAメチル化解析を行い、ヒト初代肝培養細胞との比較により肝細胞への分化成熟度について検討した。 [方法] 3種の市販hiPSC由来肝細胞を推奨プロトコルに従い播種、培養した。そのうち1種のhiPSC由来肝細胞についてはhiPSCから肝細胞への分化誘導における遺伝子発現およびメチル化状態の経時的変化を解析した。対照としたヒト初代肝培養細胞は3ドナー由来の非凍結肝細胞を用いた。各細胞からDNA, RNAを調製し、GeneChip Human Gene 1.0 ST Array (Affymetrix)により遺伝子発現解析を、Illumina HumanMethylation450 BeadChipによりゲノムDNAメチル化状態の解析を行った。データ解析にはGeneSpring GX12.0 (Agilent)を用いた。 [結果と考察] hiPSCから肝細胞への分化誘導により経時的にメチル化が低下し、発現が増加する遺伝子として3,280遺伝子が抽出された。この中には、肝細胞で高い発現が知られている代謝酵素やトランスポーター、核内レセプターなどの遺伝子が多く含まれていた一方で、他の組織で特異的な発現が見られる遺伝子も一部含まれていた。ゲノムのメチル化状態の比較では、3種の市販hiPSC由来肝細胞でヒト初代肝培養細胞と類似のメチル化状態を示す遺伝子も存在していたが、一方でそれぞれに特徴的なメチル化状態を示す遺伝子も見られた。本解析の結果は、ゲノムDNAのメチル化がヒト初代肝培養細胞に代えてhiPSC由来肝細胞をin vitroの試験に用いるための機能評価の指標として有用となることを示唆している。
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© 2017 日本毒性学会
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