日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-226
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一般演題 ポスター
エポキシ樹脂BADGEの培養神経細胞への影響
*浅沼 幹人宮崎 育子竹島 美香中山 恵利香進 浩太郎Kyle E. QUIN
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抄録
Bisphenol Aの誘導体でエポキシ樹脂Bisphenol A diglycidyl ether (BADGE)は,缶詰,飲料缶の内面コーティング剤として用いられているが,微量の食品中への移行ならびにエストロゲン活性が報告されている.Bisphenol Aについては,妊娠期マウスへの曝露により新生仔の大脳皮質の神経新生の加速,層構造異常,ドパミン投射ニューロンの投射異常ならびに多動がみられることが報告されている.しかし,BADGEについては欧州食品安全機構が発がん性がなく安全とした一日許容摂取量(TDI 0.15 mg/kg/日)は定められているものの,中枢神経系の神経細胞への影響については不明である.そこで,培養神経細胞へのBADGE曝露の影響の有無を明らかにするために,BADGEをヒト神経細胞株SH-SY5Y細胞(neuroblastoma)ならびにラット初代培養神経細胞に添加し,神経突起などの形態変化と神経系において細胞周期およびアポトーシスに関係する因子の変化について検討した.SH-SY5Y細胞へのBADGE (1-100 pM)の5日間曝露により濃度依存的な細胞数の減少,アポトーシス様細胞死がみられ,100 pMでは約40%にまで減少した.このとき,リン酸化Rb蛋白の有意な減少が認められた.さらに,ラット初代培養線条体神経細胞へのBADGE (0.1-10 pM)の2日間曝露により濃度依存的な神経突起の著明な伸長が認められた.以上の結果から,低濃度のBADGE曝露により発達期の神経細胞においてアポトーシス,細胞増殖の抑制あるいは分化誘導が惹起される可能性が考えられる.
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© 2017 日本毒性学会
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