日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-227
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PFOS発達期曝露はグルタミン酸興奮毒性に対する神経脆弱性を亢進させる
*石田 慶士古武 弥一郎津山 由美佐能 正剛太田 茂
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抄録

【目的】Perfluorooctane sulfonate (PFOS)は界面活性剤として幅広い用途に使用されてきたが、環境中での難分解性と野生生物に対する高蓄積性から、生体への悪影響が懸念される化学物質である。また、中枢神経系において重要な役割を担うグルタミン酸受容体は、過剰な活性化により神経細胞死を引き起こす。本研究では、PFOSのAMPA型グルタミン受容体サブユニット発現量に対する影響と、それに起因する神経毒性について検討した。
【方法】ラット(Slc:Wistar/ST)に妊娠11-21日の期間1.0および2.0 mg/kg PFOSを経口投与した後、出4日齢ラットの大脳皮質、海馬、小脳を摘出し、PFOS濃度およびタンパク質発現量をLC/MS/MSとwestern blottingおよび免疫染色により評価し、神経細胞形態をニッスル染色により評価した。また、胎生18日齢ラットより単離した大脳皮質初代神経細胞に1 μM PFOSを9日間後、各種解析に用いた。細胞内Ca2+濃度測定はFula2-AMによるイメージングにより評価した。
【結果および考察】新生仔ラットにおけるPFOSの脳/血中濃度比は成熟ラットに比べ5倍高い値を示した。また、2 mg/kg PFOS曝露により大脳皮質のGluR2タンパク質発現量の低下が認められた。さらに、コントロール群では異常が認められなかった投与量のカイニン酸を腹腔内投与することにより、PFOS曝露群で大脳皮質における萎縮した神経細胞の増加が観察された。GluR2サブユニットはAMPA受容体のCa2+透過性決定因子であり、GluR2の発現減少は神経細胞のCa2+透過性を上昇させることが知られている。そこで、初代神経細胞にPFOSを曝露後、グルタミン酸刺激を加えると、神経細胞死の増強と細胞内Ca2+濃度の上昇が認められた。以上の結果から、PFOS発達期曝露によりGluR2発現量が低下し、神経細胞のグルタミン酸興奮毒性に対する脆弱化が引き起こされることが明らかとなった。

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© 2017 日本毒性学会
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