日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-229
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一般演題 ポスター
低濃度の有機溶剤のニオイの単回ばく露による行動変容
*北條 理恵子土屋 政雄須田 恵安田 彰典
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抄録

 健康影響がないとされる規制値以下の低濃度の有機溶剤のニオイを6週齢のオスのWistarラット(各群5匹)ラットに単回ばく露し、複数の行動実験を行いニオイがもたらす行動への影響の有無を調べた。さらに人体に比較的無害とされるローズ臭の主成分(2‐phenyl ethyl alcohol; 2-PEA)、ナイーブなラットでも明確に嫌悪反応を引き起こすことが報告されているニオイ物質(2,4,5-trimethyl-3-thiazolin; TMT)を使用し、これらのニオイ物質の提示前後の行動がどのように変化するのかを調べ、アセトンの結果と比較した。それぞれのニオイ物質は蒸留水で300μMに希釈して綿花に浸透させて提示した。一般活動量を調べるオープンフィールドテスト、情動行動(ニオイへの嗜好性)を調べるpreference/avoidance (P/A)テスト、運動機能を調べるグリップストレングス及びワイヤーハングテストを行った。P/Aテストとは、床から50㎝の高さに配置した壁付き走路(長さ120cm×幅10cm×壁の高さ40cm)装置を用いた行動実験である。走路の両端にニオイ刺激を置き、走路中央に乗せたラットが計測時間(3分間)のうちどちらの走路側に長く滞在したかによりニオイに対する嗜好性を測るものである。結果、一般活動量と情動行動にニオイによる影響がみとめられ、さらにニオイの種類により行動変容が異なることが示唆される結果が得られた。アセトンはよりTMTに類似の結果が得られ、ラットにとってアセトンのニオイは嫌悪的であることが示された。作業を行う際には低濃度であってもニオイによる影響が考えられるため、作業の内容によってはニオイを排除するなどの何らかの対策が必要となるかもしれない。

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