日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-228
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一般演題 ポスター
パラオキソンによる振戦発現のメカニズム解析
*國澤 直史Higor Alves IHA清水 佐紀尾西 美咲野村 有治松原 菜美岩井 千紘小川 瑞葵橋村 舞河合 悦子大野 行弘
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抄録

【目的】パラオキソンは、有機リン殺虫剤パラチオンの活性代謝産物であり、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用により急性毒性を引き起こす。特に、パラオキソンにより誘発される振戦やけいれんなどの運動興奮症状は、脳内アセチルコリン量の増加に伴うコリン作動性神経の過剰興奮が原因であると考えられるが、その詳細なメカニズムは不明である。そこで今回、パラオキソンによって誘発される振戦行動に着目し、その発現メカニズムを行動薬理学的、免疫組織学的に解析した。
【方法】実験にはddY系雄性マウスを用いた。まず、パラオキソンを腹腔内投与し、誘発された振戦行動をスコア付けにより評価するとともに、ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬メカミラミンとムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬トリヘキシフェニジルの作用を評価した。また、振戦発現における脳内興奮部位を探索する目的で、神経興奮マーカーであるFosタンパクの発現を免疫組織化学的に解析した。パラオキソン投与の2時間後に脳を摘出し、抗Fos抗体を用いた免疫組織染色を行い、各脳部位におけるFos免疫陽性細胞数を計測した。
【結果および考察】パラオキソン投与により、濃度依存的に全身性の振戦が誘発された。このパラオキソン (0.6 mg/kg, i.p.) 誘発振戦は、メカメラミンにより有意に抑制されたが、トリヘキシフェニジルにより影響を受けなかった。Fos免疫組織染色の結果、背外側線条体および下オリーブ核において、パラオキソン (0.6 mg/kg, i.p.) 投与によるFos発現の上昇が認められた。さらに、パラオキソンによるFos発現上昇は、振戦行動と同様に、メカミラミンによって有意に抑制された。本研究結果より、パラオキソン誘発振戦の発現には、ニコチン性アセチルコリン受容体を介した背外側線条体および下オリーブ核の過剰興奮が関与することが示唆された。

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© 2017 日本毒性学会
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