抄録
【目的】現状,ラットを用いた一般毒性試験において薬物の暴露量を評価(トキシコキネティクス評価)する場合,主試験群とは別にサテライト群を設けているのが一般的である.近年,微量定量法の発達に伴い,主試験群の動物から微量採血(マイクロサンプリング)を行って,血中薬物濃度評価を実施した例が報告されているが,詳細な採血技術の検討や毒性評価への影響に関する報告は十分とはいえない.そこで,我々は反復採血に適していると考えられる外側尾静脈からの微量採血法に着目し,頻回微量採血が血液学的及び血液生化学的検査値に与える影響とその回復性について検討した.
【方法】6週齢の雌雄SDラットの外側尾静脈から翼付採血針及びヘマトクリット毛細管を用いて24時間以内に頻回採血を実施し,採血時点ごとにヘマトクリット値の変動を評価した.採血条件は0.05 mL×1,2,3,6,10ポイントとし,採血回数が6ポイントまでの動物は採血の翌日に,採血回数が10ポイントの動物は1~4週間後に麻酔下で後大静脈から採血を行い,血液学的及び血液生化学的検査を行って,微量頻回採血の影響について確認した.
【結果】0.05 mL×10ポイント採血まで実施しても経時的なヘマトクリット値の変動は見られなかった.採血の翌日に行った検査の結果,CK及びLDHは上昇していたが,他の血液学的及び血液生化学的パラメータに明確な変化は認められず,6ポイントまでの採血では,大きな影響はないと推察された.CK及びLDHの変化は1週間の回復期間を設けることで回復していた.なお現在,既存の毒性物質を用いて,微量頻回採血がその毒性発現に与える影響について検討しており,その検討結果も合わせて本学会にて報告する.