主催: 日本毒性学会
会議名: 第44回日本毒性学会学術年会
開催地: パシフィコ横浜
開催日: 2017/07/10 - 2017/07/12
【目的】医薬品候補化合物の実験動物における毒性からヒトにおける毒性を予測するには、その感受性や関与する薬物代謝の種差を考慮する必要がある。マウス肝臓がヒト肝細胞で置換される「ヒト肝細胞キメラマウス」は、肝臓で惹起する医薬品毒性や薬物代謝の予測評価に有用なモデル動物として期待されている。医薬品開発の中止要因のひとつとして毒性試験の所見となる薬剤誘発性リン脂質症が挙げられる。本研究では、検証化合物として「アミオダロン」を用いて、ヒト肝細胞キメラマウスに投与後の肝臓におけるリン脂質の変動を調べた。
【方法】本研究では、中程度(約65%)の割合でヒト肝細胞に置換されたヒト肝細胞キメラマウス(PXB mice®)を用いた。アミオダロンを300mg/kgを4日間反復投与し、コントロール群と比較した肝臓中のホスファチジルコリンの変化をLC/MS/MSを用いて調べた。また肝切片を作成し、イメージングMSによってヒト肝細胞領域と残存するマウス肝細胞領域でのホスファチジルコリンの分布を可視的に評価した。
【結果】アミオダロンを投与したところ、肝臓中から未変化体のみならず、活性代謝物としても報告されるデスエチルアミオダロンを検出した。また、43種類のホスファチジルコリンをLC/MS/MSを用いて測定したところ、複数の分子種において、その濃度はアミオダロンにより増加した。さらには、イメージング MSにおいて、ヒト肝細胞領域とマウス肝細胞領域におけるホスファチジルコリンの分子イメージングを解析したところ、アミオダロン投与によって変化する分子種があることが示唆された。
【考察】ヒト肝細胞キメラマウスを用いて薬剤誘発性リン脂質症の評価が可能となることが示唆された。今後、本アプローチはヒト特異的なバイオマーカー探索にも有用となる可能性がある。