日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-249
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一般演題 ポスター
ビノレルビンによる細胞傷害に対する副腎皮質ホルモン剤の抑制効果
*髙石 雅樹山室 愛子田村 雄志菊池 隆真武田 利明浅野 哲
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抄録

【目的】ビノレルビン(VNR)の血管外漏出による皮膚傷害の治療に副腎皮質ホルモン剤が用いられているが、その投与方法の設定に明確な根拠は無く、投与により却って傷害を悪化させた報告もある。そこで本研究では、起壊死性抗がん剤に分類されるVNRの細胞傷害に対する副腎皮質ホルモン剤の抑制効果について検討した。
【方法】①ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)に、副腎皮質ホルモン剤であるヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(HDC)の臨床用薬液の希釈溶液を24時間曝露し、細胞生存率を測定した。②SF-TY細胞にVNRと同時にHDCの臨床用薬液の希釈溶液を24時間曝露し、培養上清中IL-6濃度及び細胞生存率を測定した。③ヒト肝がん細胞であるHepG2細胞に、VNRと同時にHDCの臨床用薬液の10,000倍希釈溶液を24時間曝露し、細胞内マロンジアルデヒド(MDA)濃度を定量した。
【結果・考察】①HDCの臨床用薬液濃度の10~100倍希釈溶液により、有意な細胞生存率の低下が認められた。そして、HDCの半数致死濃度(LC50)は、臨床用薬液の約1/20の濃度であった。②HDCの臨床用薬液濃度の10,000~10,000,000倍希釈溶液では、VNRによる細胞生存率の低下が有意に抑制された。このとき、VNRによるIL-6濃度の増加は、HDCの臨床用薬液濃度の10~100,000倍希釈溶液の添加により有意に抑制された。③VNRによるMDA濃度の増加は、HDCの臨床用薬液の10,000倍希釈溶液により、コントロールレベルまで有意に抑制された。
 以上の結果より、HDCは臨床用薬液の100倍希釈溶液より高濃度では、細胞傷害性を示すことが明らかとなった。一方で、HDCの10,000倍希釈溶液程度の極めて低濃度では、細胞傷害性を示さずにIL-6の放出やMDA増加を抑制した。従って、臨床でVNRによる皮膚傷害の治療に用いられている副腎皮質ホルモン注射剤は極度に高濃度である可能性が示唆され、現行よりも低濃度へと見直す必要性が考えられた。

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© 2017 日本毒性学会
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