日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-66
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優秀研究発表 ポスター
ショウジョウバエへの化学物質曝露による影響の解析
*吉田 京介藤尾 克則渡辺 光竹井 小夏亀井 加恵子
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抄録

[緒言]キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は同時に大量に飼育ができ、世代間隔も10日程度であることから、大規模な遺伝学的スクリーニングが可能である。また、ヒトの疾病関連遺伝子の75%もの相同遺伝子を持ち、細胞内シグナルも共通であるためショウジョウバエは哺乳動物のモデルとして有用である。
 本研究は、ショウジョウバエを用いて、化学物質曝露による生体への影響を明らかにすることを目的としている。化学物質としては、厚生労働省がシックハウス症候群原因物質として室内濃度指針を示しているホルムアルデヒドガスおよびキシレンガスを用いた。
[実験] 羽化後24時間以内のキイロショウジョウバエ(Canton S)を餌入りのバイアルに入れネットを被せて、デシケーター内で飼育した。ホルムアルデヒド(FA)ガス(8および80 ppm)あるいはo-キシレン(XY)ガス(2 ppm)をデシケーター内に注入し(1回/日)、ショウジョウバエを曝露した。餌の交換は2日毎に行った。
[結果と考察] 曝露期間1日目のショウジョウバエについてClimbing assayの結果、非曝露群と比較してXY曝露群、FA曝露群ともに運動能力の低下が認められたが、その低下はFA群の方が大きかった。また運動能力の指標となりうるアセチルコリンエステラーゼ活性がFA曝露群で有意に低下しており、神経系への影響が考えられた。
 両曝露群において非曝露群よりも寿命の短縮がみられた。リン酸化Aktタンパク質量は、ホルムアルデヒド暴露群で増加傾向、キシレン暴露群で有意に増加しており、ストレス老化の可能性が示唆された。通常のハエは主に味覚受容体のある前足を擦り合わせるのに対して、FA曝露群では後ろ脚を頻繁に擦り合わせるといった行動異常が観測された。
 謝辞:本研究は、一般社団法人日本化学工業協会 長期自主研究(LRI)の研究助成を受けています。

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