抄録
動物試験において、使用する実験動物の特徴や背景病変を把握することは、試験結果の評価を行ううえで極めて重要である。SDラットを用いた一般毒性試験では、一般状態の異常等の前触れも無く動物が突発的に死亡する状況にしばしば遭遇することがある。特に被験物質投与群の動物がこのような状況で死亡した場合には、試験結果の評価が困難になることが多い。今回、我々の施設で実施した毒性試験の陰性対照群でみられた死亡の発生状況について調査を実施したので、その結果を報告する。調査対象とした試験は、2009~2015年に当施設において実施されたCrl:CD(SD)ラットの一般毒性試験(13週及び26週間強制経口投与:全63試験)である。
これらの試験の対照群(雄:884匹、雌:884匹、計:1768匹)における死亡発生状況を調べた結果、雄6例、雌1例(発生率として雄0.7%、雌0.1%)が原因不明の突然死であった。このうち雄1例は、痙攣を呈した後に死亡していたが、残りの全例は一般状態に異常はみられていなかった。病理学検査においても、痙攣を呈した動物を含めたいずれの動物にも異常はみられず、死因は不明であった。突然死の発生時期は、雄は11週齢、雌は8週齢よりみられ、週齢による発生数の偏りはみられなかった。雌雄を比較すると雄の発生率が高かった。
今後、対象期間や試験種を拡張して調査を行い、その結果を加えて報告する予定である。