日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-4
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シンポジウム2 カーボンナノチューブの「剛性」と発がん性(アスベストとの比較)
気管内噴霧投与法による各種のMWCNTの毒性と発がん性試験結果の比較
*津田 洋幸徐 結苟William T ALEXANDERDavid B ALEXANDERMohamed Ahmed Mahmoud ABDELGIEDAhmed Maher Mahmoud EL-GAZZAR沼野 琢旬酒々井 眞澄二口 充深町 勝巳広瀬 明彦菅野 純
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抄録

多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の発がん性試験には吸入暴露法が薦められているが、専用施設と高額な嫁動費用が必要であるために、現状でMWCNT-7について実施されたのみである(肺発がん性あり)。MWCNTは世界で300トン以上生産されているが、慢性毒性・発がん性試験は未実施である。本研究では吸入暴露装置を使わない低予算で実施できる経気管肺内噴霧投与(TIPS))法を開発してきた。方法:1)in vivo-in vitroマクロファージ(Mφ)負荷試験:10週齢ラットMWCNTを投与後に肺より採取したMφを初代培養に移して得られた上清は、ヒト由来のA549(肺がん細胞)、Met5A(中皮細胞)、MESO-1/2(上皮型/肉腫型悪性中皮腫細胞)に対して増殖活性を示すことを明らかにした。
2)肺内噴霧投与(TIPS法)試験: MWCNT-N (Nikkiso)、MWCNT-7(Hodogaya、IARC Group 2B・動物発がん物質)、crocidolite (UICC grade, IARC Group 1・ヒト発がん物質)について、2週間に8回(計1.0~1.5mg/ラット)投与後の肺と胸膜の短期・長期毒性・発がん性について解析した。
結果:短期(投与終了時)屠殺群では肺胞と臓側胸膜の持続炎症と中皮の増殖が観察され。胸腔洗浄液中にはMWCNTと炎症細胞(Mφ、好中球、リンパ球等)がみられた。肺組織と胸腔洗浄液には主としてMφ由来のCCL種が高値であり、活性化Mφの関与が考えられた。投与終了後2年観察ではMWNNT-N (Nikkiso)とMWNCT-7 (投与量1.5mg/ラット)ではいずれも肺または胸膜中皮に発がんが認められた。本法は短期気管内投与後に観察するのみであり、MWCNTの発がん性試験法として簡便にして安価な方法と考える。

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