日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-3
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シンポジウム21 遺伝毒性発がん物質の‘閾値’とリスク評価
DNA付加体形成と突然変異誘発
*戸塚 ゆ加里
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抄録
がんの発生には環境因子が大きく係っていることが良く知られている。環境中の変異原・がん原物質が生体内に取り込まれ、細胞内に侵入し、核内のDNAに結合する。これらを総称してDNA付加体と呼び、これらDNA付加体がゲノムに変異を誘発する基であると考えられている。一方、環境中には、DNAには直接作用せず発がん性を示す化学物質も存在し、これらは非遺伝毒性発がん物質として知られている。こういった非遺伝毒性発がん物質では、エピジェネティックな作用や2次的に誘発されるジェネティックな作用が発がんへと大きく関わっていることが示唆されている。このように、発がんの要因や過程が異なる場合があるにもかかわらず、これまでは特定の臓器・組織に発生し,臨床的および病理組織学的な特性が同じであれば,同じ”がん”として捉えられてきた。ところが最近、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム/エクソン解析により、様々ながんに蓄積するゲノム・エピゲノム情報が明らかにされつつある。これらのゲノム情報を用いると、エンドポイントとしては同じ”がん”であっても、複数のサブタイプに分類することが可能であることがわかってきた。また、このゲノム情報は発症要因やがん化の過程との相関が示唆されている。本シンポジウムでは、DNA付加体と変異誘発及び発がんとの関係を最近の知見に基づいて紹介するとともに、DNA付加体の網羅的な解析手法(DNAアダクトーム解析手法)を用いた、がん化に重要なDNA付加体の探索について述べる。がん化に直結するようなDNA付加体の解明が可能となれば、化学物質の有効なリスク評価の確立に繋がると考えられる。
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© 2017 日本毒性学会
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