日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-2
会議情報

シンポジウム28 次世代研究者セミナー:人工知能やBig Dataで広がる創薬とトキシコロジー
人工知能の創薬初期プロセスへの応用の可能性
*原 秀人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 医薬品開発を進める中で、臨床試験で明らかになった毒性が原因でドロップアウトする化合物は依然多い。したがって、医薬品開発の成功確率を上げるために過去の事例を人工知能に学習させ、得られたナレッジを創薬の初期プロセスにフィードバックさせることへの期待は大きい。
 創薬の初期プロセスにおいて、学習したナレッジを直接的にフィードバックする方法は化合物デザインへの還元である。創薬の現場では現在も新規化合物を創出する際にコンピュータを用いたデザイン支援は広く活用されている。特に薬物動態や毒性といった複雑系を対象とする場合には機械学習によって構築した予測モデルが活用される。弊社においても、過去十年以上に亘り実施されたスクリーニングデータを用いて動態特性や毒性を予測する構造活性相関モデルを構築し、化合物の特性予測に利用している。また、プロファイル改善のための構造変換ナレッジを抽出し、化合物のデザイン支援に利用するといった取り組みも行っている。
 このように過去のデータを学習して創薬の初期プロセスで活用させるための取り組みは広く行われているものの、一般に期待されるような「理想的な人工知能システム」を構築するにはまだ多くのステップを踏む必要がある。本発表ではまず過去データの活用事例として弊社における予測モデル構築やナレッジ抽出の取り組みの一端を紹介したい。その上で、「理想的な人工知能システム」に近づけていくためには現状で何が足りず、今後どのような取り組みを実施していくべきかを皆さまと議論したい。
 なお、本発表は発表者の個人的見解に基づくものであり、武田薬品工業株式会社の公式見解を示すものではない。
著者関連情報
© 2017 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top