日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-26
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一般演題 口演
ゲノム編集を利用したヒト遺伝子治療における新たなリスクの可能性
*小野 竜一田埜 慶子安田 智安彦 行人相㟢 健一北嶋 聡菅野 純佐藤 陽治平林 容子
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抄録

ゲノム編集技術の一つである CRISPR/Cas9 システムはゲノム上の任意の場所においてDNA二重鎖切断 (double strand breaks (DSBs)) を起こすことが可能である。DSBs は、non-homologous end joining (NHEJ) または homologous recombination (HR) により修復される。我々はマウス受精卵やNIH-3T3細胞において CRISPR/Cas9 システムを利用し、 DSBs を誘導すると、その一部では、非意図配列の挿入を伴い DSBs が修復されることを報告している。挿入された非意図配列はレトロトランスポゾンやスプライスを受けたmRNAが含まれ、非意図配列の挿入にはmRNAの逆転写が関与していることが示唆される。また、多くの CRISPR/Cas9 システムに使用したベクター配列の挿入も確認している。(Ono et al. Scientific Reports, 2015)

今回、我々はゲノム編集を利用したヒト遺伝子治療を考慮し、ヒト iPS 細胞におけるゲノム編集において非意図配列挿入のリスクがマウスと同様にあるのかを検討した。CRISPR/Cas9 システムを利用し、8遺伝子(計10箇所)にゲノム編集を行い、2000 株のiPS細胞株を単離し、非意図配列挿入の有無を解析した。およそ 3.5 % のiPS細胞株に非意図配列の挿入が起こっていることを明らかにし、その中には、ヒトのレトロトランスポゾンの一つであるshort interspersed nuclear elements (SINE) や CRISPR-Cas9 に使用したベクター配列が含まれた。本研究により、ヒトゲノム遺伝子治療において非意図配列の挿入が新たなリスクとなる可能性を明らかにした。

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© 2018 日本毒性学会
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