日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-101
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一般演題 ポスター
メチル水銀によるマウス脳神経障害へのTNF受容体3の関与
*外山 喬士戸田 英汰永沼 章黄 基旭
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抄録

【目的】 当研究室での培養細胞を用いた検討により、メチル水銀によって合成誘導されたオンコスタチンMが細胞外に放出された後にTNF受容体3(TNFR3)の細胞外ドメインに結合することで細胞死を誘導することを明らかにしている。これまでに、脳中でのTNFR3の機能について検討した例はなく、個体レベルにおけるメチル水銀毒性とTNFR3との関わりは不明である。そこで、マウス個体を用いてメチル水銀による脳神経傷害へのTNFR3の関与について検討した。

【結果及び考察】 まず、マウス各臓器中のTNFR3の発現量をイムノブロッティングにより調べたところ、腎臓や肝臓、脾臓でのTNFR3の発現量は非常に少なく、大脳と小脳において比較的高く発現していた。また、脳切片でのTNFR3抗体による免疫染色像は、神経細胞のNeuN抗体による免疫染色像と重なったことから、TNFR3は主に神経細胞で発現すると考えられる。メチル水銀 (25 mg/kg) を皮下投与し、3日後のマウス大脳におけるTNFR3の発現はcontrol群と比較し変わらなかった。次に、ローターロットテストによりマウスの運動機能を調べた。その結果、メチル水銀 (25 mg/kg) を皮下投与することによって運動機能の低下が認められ、この低下はTNFR3抗体の脳室内投与によって一部抑制された。また、マウスの大脳を摘出して作製した凍結切片をNeuN抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、メチル水銀投与によって大脳皮質に存在するNeuN陽性細胞の減少が認められたが、この減少はTNFR3抗体の脳室内投与によって抑制された。また、メチル水銀によるアポトーシス誘導時に観察されたDNAの断片化もTNFR3抗体の脳室内投与によって抑制された。以上のことから、マウスの脳内で高く発現しているTNFR3は、メチル水銀による脳神経障害に関わる重要な因子である可能性が初めて示唆された。

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