日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-102
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一般演題 ポスター
血管内皮細胞特異的にプロテオグリカン合成を調節する亜鉛錯体
*原 崇人酒巻 沙弥香中村 武浩山本 千夏鍜冶 利幸
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抄録

【背景・目的】プロテオグリカンは,コアタンパク質に対して高度に硫酸化されたグリコサミノグリカン糖鎖(GAGs)が結合した複合糖質であり,細胞膜表面や細胞外に産生される。プロテオグリカンのGAG糖鎖は増殖因子などの生体分子と結合して細胞増殖や遊走活性を調節するが,これらの機能にGAGsの硫酸化修飾が寄与することも知られている。当研究グループは,亜鉛錯体Zn-DMP(Dichloro(2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)zinc)が,血管内皮細胞の増殖活性を強力に促進させることを見出している。本研究の目的は,Zn-DMPが血管細胞から産生されるプロテオグリカン合成に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】Dense cultureとsparse cultureの血管内皮細胞および血管平滑筋細胞を調製し,[35S]硫酸を含む培地中でZn-DMPおよびその構造類縁体を処理した。細胞層および培地に蓄積したGAGsへの[35S]硫酸の取り込みはCPC沈殿法により測定した。【結果・考察】内皮細胞の細胞層および培地中に合成されたGAGsへの[35S]硫酸の取り込みは,Zn-DMPによりdense cultureでは濃度依存的に増加したのに対し,sparse cultureでは濃度依存的に減少した。これと比べて,血管平滑筋細胞のdenseおよびsparse cultureにおいては,顕著な変化は認められなかった。血管内皮細胞で認められたGAGsへの[35S]硫酸の取り込みの細胞密度依存的な変化は,Zn-DMPの配位子DMPでも生じた。中心金属の役割を検討したところ,Co-DMPやNi-DMPはZn-DMPと同様に内皮細胞のGAGsへの[35S]硫酸の取り込みを制御した。Cu-DMPおよびCd-DMPは顕著な細胞傷害性を示した。Zn-DMPおよび配位子によって発現が制御されるプロテオグリカン分子種については現在解析中であるが,これらの化合物による血管内皮細胞特異的なプロテオグリカン分子の合成調節機構の存在が示された。

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