日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-106
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酸化チタンナノ粒子による急性精巣機能障害の誘発機構
*三浦 伸彦田中 廣輝北條 理恵子大谷 勝己吉岡 弘毅
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抄録

【目的】酸化チタンナノ粒子は化粧品や塗料をはじめとして幅広い分野で利用されている。我が国におけるチタンナノ粒子の使用量はカーボンブラック、シリカに次いで第3位であり、今後のさらなる使用が予測されることから、ナノ粒子による生体影響について多角的に評価しておく必要がある。チタンナノ粒子が示す精巣障害について慢性曝露による報告は増えつつあるが、急性影響についての報告はなされていない。我々は投与3日後でチタンナノ粒子による精巣障害を認め、その誘発機構について検討を加えたので報告する。

【方法】酸化チタンナノ粒子(Aeroxide P25; TiNP)はリン酸二ナトリウム(DSP)に分散させて用いた。雄性C57BL/6JマウスにTiNPを尾静脈投与或いは経口投与し(10, 20または50 mg/kg体重)、投与3日後に精巣上体尾部中の精子数及び精子運動能を、HTM-IVOSを用いたCASAシステムにより測定し精巣障害指標とした。

【結果及び考察】我々の先行研究で、TiNPを週1回、4週間投与し、最終投与3日後に精巣障害(精子数減少及び精子運動能低下)を認めた。しかしこの障害が総計4回の投与に起因するものか、或いは4回目の投与のみに起因するものか不明であったことから、TiNPを単回尾静脈投与し、投与3日後の精巣機能を調べたところ、精子数の減少は認められなかったものの、精子運動能が有意に明確に減少した。この結果は急性チタン障害を示し、投与後の短期間ではTiNPによる精巣影響は観察されず、成熟精子或いは精巣上体尾部に作用することを示す。そこで単離精子浮遊液にTiNPを直接添加したところ精子運動能は低下したことから、TiNPは成熟精子に直接アタックする可能性が考えられた。またTiNPにより精子運動能の低下が観察されたことから、精子浮遊液にTiNPを添加して3時間後の精子中ATP量を測定したところ、TiNP添加量依存的にATP量は低下した。さらにこの時、ATP産生に関与するATP-citrate synthaseのタンパク量も低下する傾向にあり、in vivoでの解析を急いでいる。以上の結果は、TiNPは精巣機能に慢性的だけでなく急性的にも作用すること、成熟精子が標的の一つであり、ATP産生系が抑制される可能性を示している。

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