日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-107
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一般演題 ポスター
多層カーボンナノチューブの気管内投与による肺及び胸腔への影響:ラット系統差比較
*宇田 一成杉山 大揮沼野 琢旬原 智美萩原 顕昭河部 真弓米良 幸典
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抄録

【背景・目的】

 ナノ材料の呼吸器系への有害性評価においては、主に気管内投与法が用いられている。動物は、毒性試験若しくは長期がん原性試験に使用されるCrl:CD(SD)ラットやF344/DuCrlCrljラットが用いられるが、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の気管内投与法による長期がん原性試験では、F344ラットの使用が報告されている。BrLHan:WIST@Jcl (GALAS)ラットは、従来から安全性試験等に用いられており、特に2年間のがん原性試験に適した系統である。

 本実験では、気管内投与法を用いた2年間の発がん性試験により肺腫瘍及び中皮腫発生が報告されたMWCNTを、上述の3系統のラットに単回気管内投与し、投与3日後の肺及び胸腔における急性影響について比較検討を行った。

【方法】

 動物は8週齢の雄F344/DuCrlCrlj、Crl:CD(SD)及びBrLHan:WIST@Jclラットを用い、いずれの系統もMWCNTを0.5 mg/kgの用量で気管内投与する群と媒体(0.5%のKolliphor P188含有生理食塩液)のみを気管内投与する媒体対照群を設けた。観察期間中は一般状態観察及び体重測定を行い、投与3日後に剖検し、肉眼的病理学検査及び器官重量の測定を行った。また、肺胞洗浄液(右肺)及び胸腔洗浄液を採取し、細胞分類及び生化学的検査を行った。

【結果・まとめ】

 MWCNT及び媒体の投与に起因する一般状態の変化として、投与直後にラッセル音がみられたが、投与翌日には消失し、その後はいずれの系統にも異常所見はみられなかった。体重は観察期間を通して各系統ともMWCNT投与群と媒体対照群の間に有意な差はみられなかった。また、肉眼的病理学検査ではMWCNT投与群で肺の変色(黒)がみられ、被験物質の沈着を示唆する変化と考えられた。器官重量では、肺の相対重量は媒体対照群と比較していずれの系統でも有意な高値を示した。

 現在、胸腔及び肺胞洗浄液における細胞分類及び生化学的検査の解析、肺を含めた主要臓器の病理組織学的検査を行っており、上記の検査結果と併せて本学会にて報告する。

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