日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-148
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幼仔ラットにおけるメチル水銀投与の影響とMARCKSタンパク質の関与
島村 昇吾坂本 峰至山元 恵宮本 篤*白石 光也
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抄録

【背景と目的】胎児性水俣病では、母体胎盤を通じたメチル水銀暴露による影響を受け、胎児で脳障害に伴う様々な中枢神経症状が引き起こされるが、胎児脳に対するメチル水銀毒性発現メカニズムに関しては十分には理解されていない。Myristoylated alanine-rich C-kinase substrate (MARCKS)は中枢神経系に豊富に発現し、神経細胞の分化や成熟に関わっているタンパク質である。特に胎児期の脳の正常な発育に必須であること、またその機能がリン酸化により制御されることが知られている。そこで本研究では、ヒト胎児期における脳の発育段階に相当する幼仔ラットを用いて、メチル水銀投与の影響とMARCKSタンパク質との関連を明らかにすることを目的とした。【材料と方法】雄幼仔ラット(14日齢)に塩化メチル水銀(0-10 mg/kg/day)を10日間連続経口投与し、脳におけるMARCKS発現量およびリン酸化量の変化をWestern Blot法により、またMARCKSリン酸化陽性細胞数および陽性細胞面積率を免疫組織化学染色により検討した。【結果と考察】Western Blot法による検討では、対照群とメチル水銀投与群との間にMARCKS発現量の変化は認められなかったが、メチル水銀投与群の大脳皮質と小脳においてMARCKSリン酸化量の濃度依存的な上昇傾向が認められた。免疫組織化学染色では、大脳皮質においてグリア系と考えられる細胞でのリン酸化MARCKSの強い陽性反応がメチル水銀投与群で観察され陽性細胞数の上昇傾向が認められた。一方、リン酸化MARCKS陽性細胞面積率は有意に低かった。メチル水銀投与群でのヘマトキシリン・エオジン染色像では、リン酸化MARCKSが陽性を示した部位でグリア系細胞の増生が認められた。以上の結果から、増生したグリア系細胞でのMARCKSリン酸化反応の促進が示唆され、これが幼仔ラットにおけるメチル水銀毒性の発現に関与している可能性が考えられた。

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