日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-176
会議情報

一般演題 ポスター
神経分化時における環境化学物質曝露によるエピジェネティクス変化の解析
*栗田 尚佳郷 すずな松本 夏南畑野 愛位田 雅俊保住 功
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】現在、生物濃縮によってMeHgが蓄積した魚介類の摂取による胎児における低濃度のMeHg曝露影響が懸念されている。胎児は発達段階であり、機能的に未成熟な部分が多い。そのため分化に伴う遺伝子制御系の構築がMeHgによって阻害され、その影響が長期的かつ不可逆的なものとなる可能性が高い。しかし、MeHgの胎児期曝露による影響に関する毒性メカニズムは不明である。一方で、発達期は遺伝子のエピジェネティクスが大きく書き換わる時期であり、神経発達期においてもエピゲノム修飾の攪乱が引き起こされる可能性がある。そこで、MeHgによる神経発達への影響の毒性メカニズムとしてエピジェネティクスに注目し、in vitro神経分化系を用いて解析を行った。

【方法】ヒトの神経分化系として、ヒト大脳皮質由来不死化細胞 (ReNcell CX細胞)と、ヒト中脳由来不死化細胞 (LUHMES細胞) を用いた。ReNcell CX細胞についてMeHg 50 nMを神経分化開始時から14日間曝露した。LUHMES細胞についてMeHg 1 nM を神経分化2日目から8日間曝露した。神経分化後、神経突起伸長について、IN CELL ANALYZER 2000により網羅的に形態を評価した。また、代表的なエピゲノム修飾のヒストン修飾変化をウエスタンブロット法にて測定した。

【結果および考察】ReNcell CX細胞とLUHMES細胞ともに、MeHgによる神経突起伸長の減少が認められ、ヒストン修飾のうち、転写促進修飾であるアセチル化ヒストンH3の低下と、転写抑制修飾であるヒストンH3リジン27のトリメチル化の増加が認められた。以上から、神経分化期においてはMeHg曝露がエピジェネティクスを変化させることが示唆された。今後は、神経突起伸長減少などの表現型と、エピゲノム変化との因果関係の解明、および表現型に関連する個々の遺伝子のエピジェネティクス解析を行う。

著者関連情報
© 2018 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top