日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-178
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一般演題 ポスター
親電子解毒代謝系システインパースルフィドの新しい合成酵素の発見
*井田 智章守田 匡伸西村 明松永 哲郎居原 秀澤 智裕藤井 重元熊谷 嘉人本橋 ほづみ赤池 孝章
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抄録

【目的】我々はシステインパースルフィド(CysSSH)などの活性イオウ分子種(reactive sulfur species, RSS)が生体内で多量に合成されることを見出した。RSSは高い求核性と還元性を有し、生体内で強力な抗酸化活性を発揮している。さらに、RSSはメチル水銀に代表される親電子化合物への曝露により誘発される環境ストレスを制御することが示された。しかしながら、その生成機構・動態と生理機能については未だ不明な点が多かった。そこで我々は、特異性、定量性を改良したRSS定量解析システムを構築し、生体内のRSS生成動態と新しいCysSSH合成酵素を同定した。

【方法・結果・考察】親電子性プローブを探索し新たに得られたβ-(4-hydroxyphenyl)ethyl iodoacetamideにより各種RSSをラベル化(捕捉)、安定化し、そのアダクトを安定同位体希釈法とLC-MS/MSを用いてより特異的に検出することでRSS定量解析システムを構築した。さらに、本解析法を応用して、タンパク質ポリスルフィドの定量解析システムを確立し、生体内の多くのタンパク質が高度にポリスルフィド化していることを証明した。また、ポリスルフィド化タンパク質合成機構を解析するなかで、翻訳酵素の1つであるcysteinyl-tRNA synthetase(CARS)が、システインを基質にpyridoxal phosphate依存的にCysSSHを合成し、翻訳に共役してポリスルフィド化タンパク質を合成することを明らかにした。さらに、CRISPR/Cas9システムにより哺乳類細胞のミトコンドリアに局在するCARS2を欠損・変異したHEK293T細胞およびマウスを開発した。これらのCARS2欠損・変異モデルを解析した結果、細胞、個体レベルでCARS2が主要なCysSSH合成酵素であることを発見した。今後、CARS2欠損・変異モデル細胞およびマウスを用いることで、活性イオウ分子を介した環境化学物質の解毒代謝や環境ストレス応答の制御機構の全貌が解明されることが期待される。

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© 2018 日本毒性学会
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