日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-179
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一般演題 ポスター
硫化水素解毒酵素sulfide-quinone oxidoreductaseの機能解析
*西村 明守田 匡伸南嶋 洋司井田 智章松永 哲郎藤井 重元本橋 ほづみ赤池 孝章
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抄録

硫化水素は、生体内でsulfide-quinone oxidoreductase(SQR)によって解毒代謝されることが示唆されているが、その代謝メカニズムの詳細は不明である。一方、我々は最近、CARS2によって産生されるパースルフィドなどの活性イオウ代謝物が、ミトコンドリア電子伝達系の電子受容体として働くことで、新規エネルギー代謝であるイオウ呼吸を司ることを発見した(Nat. Commun., 2017)。本研究では、SQRゲノム編集マウスを作製し、SQRによる硫化水素の代謝機構の解明を試みた。ミトコンドリア局在タンパク質であるSQRのミトコンドリア移行シグナル配列を欠損させ、ミトコンドリア選択的SQR欠損(SQRΔN変異)マウスを作製した。このマウスから不死化線維芽細胞(SQRΔN変異MEF)を樹立し、SQRタンパク質の局在を解析したところ、SQRΔN変異体はミトコンドリアには局在せず細胞質のみに発現していた。さらに、細胞の硫化水素代謝活性はSQRΔN変異MEFと野生型MEFで有意な差は認められず、SQRΔN変異は硫化水素解毒機能を保持していることが判明した。次に、SQRΔN変異MEF のミトコンドリア膜電位を解析した結果、野生型MEFに比べて膜電位が顕著に減少していることを見出した。このことは、SQRがミトコンドリア内で硫化水素のプロトンを利用し、膜電位の形成・維持に関与していることを示唆している。また、SQRΔN変異マウスは生後3週間からエネルギー代謝不全により成長遅延を示し、生後2ヶ月以内に死亡した。以上より、 SQRは硫化水素の解毒代謝のみならず、硫化水素を利用して膜電位を形成・維持することでイオウ呼吸を行い、エネルギー代謝に関わることが明らかとなった。

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© 2018 日本毒性学会
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