日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-21
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優秀研究発表 ポスター
4CYPs導入HepG2細胞における代謝物を考慮したミトコンドリア毒性評価
*宮 思敏川口 萌実関根 秀一竹村 晃典佐藤 大介香月 康宏押村 光雄堀江 透伊藤 晃成
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抄録

 薬物性肝障害(DILI)は医薬品の市場撤退の主たる原因の一つであるため、前臨床段階において適切な評価系が必要である。DILI発症メカニズムとして反応性代謝物を含む毒性の高い代謝物 (TMs) の生成やミトコンドリアに対する機能障害が関わることが報告されている。毒性評価に用いる細胞ソースとして初代ヒト肝細胞は代謝酵素発現が生体に近い点で有用だが、高価でかつロット差が大きいことが問題である。この問題を克服するため、今回我々は、人工染色体技術で作製されたCYP4分子種(2C9, 2C19, 2D6, 3A4)強制発現HepG2細胞(TC-1)を用いることで、代謝物を考慮したミトコンドリア毒性が評価可能となるか検討を行った。HepG2細胞は通常の培養条件下ではCrabtree効果によりエネルギー産生が解糖系にシフトしており、ミトコンドリア毒性に起因する細胞死の検出は困難である。そこで、糖源をGalactoseに置換することで同効果を回避した条件と通常の条件(糖源がGlucose)で、HepG2ならびにTC-1細胞を培養した。各種薬物を曝露し、24時間後までに上清に漏出したLDHを測定することで細胞死の指標とした。その結果、TMsによるミトコンドリア毒性が既知のAcetaminophenや Amiodarone, Benzbromaroneでは、Glucose培地で培養したHepG2細胞に比べ、Galactose培地で培養したTC-1細胞の方で毒性が増強した。一方、未変化体がミトコンドリア毒性を示すことが既知のRotenoneでは、Glucose培地で培養したHepG2細胞に比べ、Galactose培地で培養したTC-1細胞で毒性が減弱した。さらに、臨床試験において肝障害が原因で開発中止となった5化合物(CP724814, CP456773, Zamifenacin-fumarate, ADX10059, LY2886721)についても本評価系で評価を行った。その結果、CP-724714, Zamifenacin-fumarate, ADX10059では、TMsの生成がミトコンドリア毒性発現に寄与することを示唆する結果を得た。Galactose培養したCYP導入HepG2(TC-1細胞)を用いることで、前臨床段階において薬物代謝を考慮したミトコンドリア毒性評価を安価かつロット差の影響なく行えるようになると期待される。

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