日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-20
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優秀研究発表 ポスター
オートファジー阻害剤と抗がん剤の併用による抗腫瘍メカニズムの解析
*安田 純一安達 蒼中川 博史西村 和彦
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抄録

オートファジーは,細胞質成分を包み込んだオートファゴソームがリソソームと融合してオートリソソームを形成し,その分解産物を再利用することで細胞生存性を高める機構である.抗がん剤はオートファジーを促進するため,オートファジーの阻害により細胞障害を引き起こし,がん進行を抑制することが試みられている.リソソームの酸性化を阻害するクロロキン(CQ)にはオートファジー阻害効果があり,抗がん剤と併用する臨床研究が行われているが,その抗腫瘍メカニズムについては不明な点が多い.本研究は,CQと抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)の併用による細胞レベルでの抗腫瘍メカニズムの解明を目指した.HepG2細胞にアポトーシスを誘導しない用量である2 µg/mLのCDDPと40~160 µMのCQを併用処置し,24時間後にアポトーシスの誘導についてはHoechst33342染色,オートファジー誘導についてはLC3タンパク量のウェスタンブロット,オートリソソーム形成についてはMonodansylcadaverine(MDC)染色で評価した.オートファゴソームと同じくリソソームと融合し分解される後期エンドソーム量は細胞溶解物中のCD63タンパク量,後期エンドソームの内容物で細胞外に放出されるエクソソームの分泌量は培養上清中のCD63タンパク量のウェスタンブロットで評価した.アポトーシス誘導,LC3タンパク量,及びオートリソソームの形成はCDDP単独処置と比較してCQ併用処置で増加した.また後期エンドソーム量及びエクソソーム分泌量についてもCDDP単独処置と比較してCQ併用処置で増加した.今回の結果から,オートリソソームの分解抑制によりオートリソソームが蓄積することでオートファジーが阻害された結果,アポトーシスが誘導されたと考えられる.また,オートリソソームの蓄積によりリソソームの処理能力が逼迫したため,後期エンドソームが滞留し,エクソソームの分泌が増加したと考えられる.

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