日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-229
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一般演題 ポスター
トレーニングしたテレメトリーサルにおけるハンドリング及びケージ内頻回採血がCVパラメータの評価に及ぼす影響
*鎌田 満稔島田 知季林 良太大塚 博比古福井 英夫
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抄録

 テレメトリー送信器を留置した動物を用いて心血管系に及ぼす影響を評価する安全性薬理(テレメトリー)試験では、薬物作用の有無と血中薬物濃度との関係が評価上重要である。一般的にサルでは採血時のハンドリング操作が心血管系パラメータに影響を及ぼすことが知られていることから、血中薬物濃度(TK)測定を別試験として実施することが多い。しかし、同一試験内にTK測定を組み込むことができれば、心血管系変化とその時点での血中薬物濃度との関係を同一個体で評価することができ、実験回数及び被験物質量の削減も期待される。今回、テレメトリー試験へのTK測定の組み込みを目的として、以下の検討を行った。社内トレーニングプログラム(入荷後4週間のヒト親和性向上トレーニング+4週間のハンドリングトレーニング)及び行動量測定で判定基準をクリアしたサル4頭に送信器を埋め込み、ケージ内採血のトレーニングを1日2回(午前及び午後)、1回当たり2分以内で約2ヵ月間行った。その結果、4例中3例はトレーニング開始2週目までに、残り1例は開始7週目までに、トレーニング効果が完全に獲得され、TK採血操作が心血管系パラメータに大きな影響を与えなかった。これらの動物に、α1受容体作動薬エチレフリン及びCa拮抗薬ニフェジピンを投与して、ケージ内TK採血を実施した条件で心拍数及び血圧を評価した。その結果、データ取得中のTK採血操作は、エチレフリンによる血圧上昇、ニフェジピンによる心拍数増加及び血圧下降の程度に影響を及ぼさないことが明らかとなった。以上より、サルのテレメトリー試験へのTK採血の組み込みは、試験前にトレーニングを行うことにより、個体ごとに血中薬物濃度を考慮した精度の高い心血管系評価が可能であった。また、本法は実験回数及び被験物質量の削減に繋がり、動物愛護及びコストの観点からも有用であると考えられた。

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