分析機器の高感度化により、微量採血(マイクロサンプリング:MS)技術のトキシコキネティクス(TK)試験への適用が可能となった。これにより、動物福祉への貢献(動物の苦痛の軽減及び動物数の削減)に加え同一個体での毒性と全身曝露の適切な評価が期待できる。MSの利用はICH S3AのQ&Aに記述され、各施設とも早急な対応が必要となっている。そこで、本研究では、MSのマウス及びラット毒性試験への適用、さらに採血量の最小化を目指して、微量血漿を用いた定量法の確立、並びに頻回採血による薬物定量値と臨床検査値への影響を評価した。
2 µL血漿を用いたacetaminophen(APAP)及びcyclophosphamide(CPA)の微量化測定法バリデーションを実施した結果、選択性、検量線の直線性、日内及び希釈再現性、少量血漿保管による冷凍保管及び凍結融解安定性を確認した。また、微量採血法としてマウス頸静脈からのシリンジ採血法(20 µL/時点)を採択した。さらに、上記2剤をマウスに経口投与し、1個体から4回採血と2回採血群間で微量化測定法にて血漿中濃度を比較した結果、頻回採血による定量値への影響はみられなかった。また、ラット頸静脈からシリンジ採血法で頻回採血(20 µL/5時点)し、臨床検査値に及ぼす影響を調べた結果、一部項目に軽度な変化がみられたが、いずれも背景値の平均±2SDの範囲内であった。
以上、MSを用いてマウス薬物動態及びラット臨床検査値に及ぼす影響を検討した結果、マウスではAPAP及びCPAの薬物動態パラメータに影響はみられなかったこと、ラット臨床検査値にほとんど影響を及ぼさないことから、MSの毒性試験への応用は可能であると考えられた。また、本法の毒性試験への応用により、マウスのサテライト動物数削減やラットのTKサテライト群の撤廃などが期待される。