日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-27
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優秀研究発表 ポスター
カドミウムによるがん細胞浸潤の亢進:アポリポプロテインEの発現はエピジェネティクス修飾を介して調節される
*平尾 雅代竹田 修三小林 隆信喜納 克仁宮澤 宏瀧口 益史
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抄録

【目的】カドミウム(Cd)は国際がん研究機関によりヒトに対して発がん性を示す物質として分類されている。我々は、Cdの長期曝露がエピジェネティクス修飾を介して細胞のがん化、すなわち「悪性形質転換」を引き起こすことを見出している。これまで脂質代謝に関与する遺伝子として注目されてきたアポリポプロテインE(ApoE)の新たな生理機能として細胞浸潤を抑制することが報告された(Pencheva et al., Cell, 2012)。最近、我々はCd誘導性のがん細胞浸潤の亢進にApoEの発現低下が関与することを明らかにした(Suzuki et al., Toxicology, 2017)。本研究では、Cdの長期曝露によるApoEの発現調節機構をエピジェネティクス修飾に着目して明らかにすることを目的とした。

【方法】前がん細胞モデルTRL 1215 細胞にCdを長期曝露(10週間)した後、さらにCd不含培地で4週間培養し、細胞増殖アッセイ、細胞浸潤アッセイ、real-time RT-PCR、バイサルファイトシークエンス解析、メチル化特異的PCR解析を行った。

【結果および考察】Cd長期曝露により悪性形質転換した細胞では、細胞増殖能や細胞浸潤能が亢進していることが確認された。この悪性形質転換した細胞におけるApoEの発現は、コントロール細胞の10分の1程度まで低下していたが、DNA脱メチル化剤を処理することにより、ApoEの発現がコントロール細胞レベルまで回復したことから、CdによるApoEの発現低下にはDNAの高メチル化の関与が示唆された。そこで、バイサルファイトシークエンス解析およびメチル化特異的PCR解析の結果、Cd曝露によりApoEの発現調節領域のメチル化レベルが亢進していた。以上より、Cdの長期曝露によるがん細胞浸潤の亢進におけるエピジェネティクス修飾(高メチル化)を介したApoEの発現低下の関与が示唆された。

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